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参院選の論点、消費税減税は果たして本当に金持ち優遇となるのか

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参議院選挙2025は減税と給付がテーマ

 

私たちの未来の方向性を決める、大切な参議院選挙2025が始まりました。今回は与党が過半数割れするかどうかというあたりも含めて、勝負論があるのでかなり盛り上がってきているようです。

 

さまざまな政策が議論に上がっていますが、やはり毎回注目を集めるのは「税」をめぐる議論です。特に今回は、「消費税の減税、あるいは廃止」という主張が、かつてなく大きな声となって聞こえてきます。

昨今の記録的な物価高を考えれば、日々の負担を少しでも軽くしたいと願うのは、日本で暮らす一般の人々にとっては、ごく自然な感情でしょう。特に食料品は、店頭で値札を見るたびに、その切実さを実感している人は多いのではないでしょうか。

ただ、だからといって減税する、現金給付するというのがその課題に対する正解なのかどうかはよく考える必要があると思います。私は、国の財政というマクロな視点も気にかかっています。

企業経営に置き換えてみれば、日本の財政は危機的状態

日本の財政がプライマリーバランス(基礎的財政収支)の赤字を長年抱え、巨額の国債残高が存在する事実は、メディアでも繰り返し報じられている通りです。

企業経営で言えば、営業赤字の状態が続き、毎年銀行から追加借入を行なっているのと同じ状態です。普通に考えて、銀行が貸してくれなくなるのは近い将来想像できますし、貸出金利はどう考えても上がっていくとしか言いようがありません。

国家に置き換えたとしても、国が借金するための国債を誰も買ってくれなくなり、金利を上げないといけない状態になるので、状況としては同じことになります。もちろん、国債と会社の借入は違うということはある上で、とはいえ根本的な考え方は同じだと思っておくべきです。

その中で、国の税収の根幹をなす消費税という安定財源に手をつけることが、果たして長期的に見て賢明な選択なのか。その負担は、形を変えて未来の世代、あるいは近い将来自分たち自身に返ってくるのではないか、ということを考えて、目先の得だけではなく、長い目で見る必要があると思うわけです。

そんな視点で今回の論戦を眺めていたところ、非常に興味深い論理・主張に出会いました。

「消費税を減税すると、高所得者層が優遇されることになる」は本当か

これまであまり本気で消費税減税を検討したことがなかったのが、最近与党の衆院過半数割れによって現実味を帯びてきて、急にこのような話ができたのではないでしょうか。消費税といえば、これまで「低所得者ほど負担が重い逆進性があり、高所得者に有利な税制だ」と批判されてきたはずです。それが今度は「減税が高所得者優遇」になるというのはかなり斬新な主張に感じました。

一見すると矛盾しているように思えますし、少し混乱してしまいます。なぜ、このような正反対に見える主張が存在するのか。今回はその構造を調査しつつ、自分なりの考えを整理してみたいと思います。

「逆進性」という、これまでの常識

まず、私たちの多くが共有しているであろう「消費税は一定の税率なため公平に見えつつも、その実、低所得者にとって負担が重い」という認識について、その根拠を確認しておきましょう。これは「逆進性(ぎゃくしんせい)」という消費税の性質に由来します。

簡単に言えば、「所得水準が低い人ほど、所得全体に占める税金の負担『率』が高くなる」という現象です。

その背景には、所得に占める消費支出の割合(消費性向)が、低所得者層ほど高くなる傾向があるためです。高所得者層は所得の一部を貯蓄や投資に回す余裕がありますが、低所得者層は所得の大部分を日々の生活費、つまり「消費」に充てざるを得ません。そのため、消費税においては低所得者に重く、高所得者に軽いと言われるわけです。

ものすごく単純化して説明します。

仮に、年収300万円で年間250万円を消費する世帯と、年収2,000万円で年間1,000万円を消費する世帯を比較してみましょう。消費税率10%で計算すると、年収に対する税負担の「率」は以下のようになります。

  • 年収300万円の世帯:税負担25万円 ÷ 年収300万円 = 負担率8.3%
  • 年収2,000万円の世帯:税負担100万円 ÷ 年収2,000万円 = 負担率5.0%

支払う税金の絶対「額」は高所得者の方が多いものの、所得に対する負担の「率」で比較すると、低所得者層の方が重くなる。これが消費税の逆進性の本質といえます。かねてより公平性の観点から課題として指摘されてきた点です。この逆進性の緩和を目的としたのが、現在食料品などに適用される8%の軽減税率制度というわけです。

仕組みとしてはややこしくなりますが、ある程度の効果は見込めるのではないでしょうか。

「減税こそが高所得者優遇」という新しい視点

では、本題である「消費税の減税こそが高所得者優遇だ」という、もう一方の主張はどのような論理なのでしょうか。消費税導入、消費税率アップの際に散々、高所得者への優遇だと騒がれてきたのが、一転して税率を下げることも高所得者への優遇だとなるのは矛盾しているように感じます。

その答えは、先ほどとは視点を変え、減税によって「誰が、いくらの恩恵を受けるのか」という、その絶対「額」に注目することで見えてきます。

同じ例で、消費税が 10% から 5% に減税された場合に、各世帯が支払わなくて済むようになる税金の額、つまり減税による恩恵額を計算してみます。

  • 年間50万円を消費する世帯:減税による恩恵額は 250万円 × 5% = 12.5万円
  • 年間1,000万円を消費する世帯:減税による恩恵額は 1,000万円 × 5% = 50万円

この結果から見てわかる通り、減税によって可処分所得が増える金額は、消費支出の大きい高所得者層の方が格段に大きくなります。もし税率が 0% になれば、その差は 25万円と 100万円となり、さらに拡大します。

ここからすると一見矛盾している 2 つの説のポイントは下記の通りとなります。

  1. 負担の「比率」に焦点を当てれば、消費税は逆進的である。
  2. 減税の恩恵「額」に焦点を当てれば、減税は高所得者層ほど有利に働く。

どちらも嘘とは言い切れず、単に物事を見る角度が違うだけなのです。消費税をめぐる議論がなぜこれほど複雑化し、時にねじれて見えるのか、その背景が少し見えてくるのではないでしょうか。消費税を政治家が語る場合には、同じ現象に対してポジショントークとして異なることが主張がなされることがわかります。どちらの主張を誰が唱えていて、その政治家なり政党がどういうことをしたいのかということをよく見ていくと理解が深まることでしょう。

改めて図をよく見直してもらって、円グラフの紫のところを見てみましょう。この円グラフの「比率」から見れば年収2,000万円世帯の減税「率」としては少ないということがわかると思います。

失われる「最大の財源」という重い現実

さて、減税に対して恩恵を受ける率だろうが額だろうが、誰もが少しは負担が軽くなるのだから良いではないか、という考え方もあるかもしれません。特に物価上昇に対して、収入である賃金の上昇が追いついていない「実質賃金の低下」に悩まされている人々にとっては、なんでもいいから物価を下げて欲しいという気持ちもわからなくはありません。実際、万が一消費税が10%から5%になったとすれば、消費者からすると実質物価が5%下がるといえるので、物価上昇率(おおよそ2%前後)よりも改善するということになります。

しかし、ここで考えなければならないのが、失われる財源をどう補うか、という極めて現実的な問題です。国の発表によれば、2024 年度の国の税収において消費税が占める割合は最大で、その額は約 23.8 兆円にも上ります。所得税や法人税をもしのぐ、文字通り日本の財政の屋台骨です。企業経営で言えば、売上の大幅減になるわけです。

これを仮に税率5%に半減させれば、毎年約12兆円という、国家予算レベルの財源が失われるということになります。物価が下がる分、消費が増えて景気が良くなるので税収につながるという主張もあるようですが、実際問題としては人々は追加で何かを買うということではなく、現在物価上昇を続けている生活必需品を買いやすくなるというだけだと思います。

したがって、私は消費税減税もしくは廃止で経済成長が起きて税収の減少を補えるという論には与しません。そうなると、冒頭に書いたようにただでさえ赤字決算を続けている日本の財政は、消費税収が下がったままやっていけるはずがありません。

実際にこの規模の財源不足を補う方法は、限られています。

  • さらなる国債の発行(将来世代への負担先送り)
  • 所得税や法人税など、他の税の引き上げ(結局、違うところで税金はかかる)
  • 社会保障をはじめとする行政サービスの大幅な削減(生活困窮者を助けるはずの減税がサービスの低下という結果として同じ人たちに降りかかってくる可能性)

どう考えても、さらに借金を重ねるという選択肢はあり得ないと思います。その他の選択肢も、私たちの生活に大きな影響を及ぼす、痛みを伴うものです。所得税を上げれば、結局は可処分所得が減るので、消費の際に税金が下がったとしてもそもそもの手取りが下がります。

個人的には、特に大企業の法人税は上げてもいいのではないかと思っていますが、それだけで消費税の減額分を賄いきれません。また、企業の業績に左右される税金は安定的な使途を組みにくくなります。消費税収は法律によって「年金・医療・介護・子育て」といった社会保障給付の財源に充てることが定められています。安易な減税は、結果として私たちが頼りにしているセーフティネットを脆弱にしかねない、という側面を持っているわけです。

私が普段見ているような日経関連の記事やその他のニュースサイトの論調では、この消費税減税や現金給付というのはあまり国民に支持されていないようです。

なんだかんだ、目の前の小さな得のために、将来にわたる損失になることはしないという、いわば当たり前のことがわかってもらえているのかもしれません。

最後に思うこと

今回は、選挙の争点の一つである消費税をテーマに、増税時の高所得者優遇と減税時にも同じことがうたわれることに対する疑問から、少し掘り下げてみました。

「減税」や「現金給付」という言葉は、常に魅力的です。しかし、その提案がもたらす多面的な影響をよく考え、誰に最大の恩恵があり、その裏側で何を失う可能性があるのかということを冷静に見極める必要があります。

選挙に行っても何も変わらないという人は、少なくとも私の周りにはほとんどおらず、しっかりと意思表示することで政治は変わると思います。現実に、衆院の与党過半数割れにより、多くのことが変わりつつあります。野党の政策にも重みが出てきています。ここで各政党の言い分を良いところだけでなく、痛みを伴う治療をするのかどうかも含めて見極める必要があります。

消費税増税と減税で反対の現象が起きるのに、批判内容が変わらないという矛盾について少し調べて書いてみようと思い立って、調査をしていたら、背景も説明しないとわからないのかなということで、結局長い記事になってしまいました。そういうのばかりなので、自分の手グセとして諦めるしかないのかもしれません。

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星川哲視

星川哲視

デジタルライフプロダクトを取り扱うトリニティ株式会社を起業、約20年経営の後「卒業」。

スマートフォン向けカジュアルゲーム企画・開発会社エウレカスタジオ株式会社代表取締役、投資会社コスモスタジオ代表取締役を兼任。

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