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経営や趣味、時事などのブログ記事や、Podcastの発信を日々行なっています。ニュース登録をしていただければ、更新情報を配信していきますのでお気軽にご登録ください。(広告を配信することはありません)
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【エピソード概要】
Jawbone UPは、予想をはるかに超える予約が殺到し、瞬く間に在庫不足に陥った。商品がまったく足りない状況により、流通担当者と共に各量販店へ謝罪に回る事態となる。
特に、ある量販店のバイヤーから2時間も理不尽な怒りをぶつけられ続けたという、生々しいエピソードを明かす。そして、予想外の成功の裏で、製品には深刻な不良問題が発生。
製品展開に慎重になるトリニティと、さらなる展開を望むメーカー側との間に、ビジネスの方向性に関する大きな溝が生まれる。この難局において、トリニティが選んだ道とは。
「Podcast:リアル経営」このエピソードに関するご意見・ご感想をぜひお寄せください。今後の配信の参考にさせていただきます。
リアル経営|企業経営の成功と失敗、等身大で語る台本なき社長のリアル」
この番組は、私、Hossyこと星川哲視が自らの体験をもとに、経営やその舞台裏などをリアルに語っていきます。
リアル経営は、毎週金曜日朝6時に配信しています。
おはようございます。自由人のHossyこと星川哲視です。
おはようございます。STRKのがじろうです。
前回は、「Jawbone UP」という製品の話をしました。トリニティの20年近い歴史の中でも、ここまで画期的で革新的な素晴らしい製品はほかにありません。僕自身も大ファンで、自分でも使い続ける製品。もともとJawboneはヘッドセットも常に使っていたし、JAMBOXスピーカーも愛用していました。
それをさらに超える形でJawbone UPが出てきたのは、すごいことだと思ってます。
それを、まだ無名の頃から代理店として扱えるようになっていたんですよね。
そうですね。実際に輸入代理店をやろうと決めた頃には、そこまでのヒットは想像もしていなかったわけですよね。
そうですよね。こうなるとはね。
そうそう。だから僕に先見の明があったわけではないんです(笑)
そうですよね。
結果として、この3つの大きなプロダクトに関わることができましたが、メーカーとしてのJawboneがどう考えて製品を作り、どうアプローチしていくかという部分も含めて、日本においては、より自分事として熱を持って展開していました。
うん。
前回の終わりで「すごい売れました」という話をしました。
はい。
「オンラインは簡単」と言うと、語弊があるかもしれませんが、オンラインはできます。ですが、お店、つまり量販店などへ、どう展開していくのか?
はい。
当然のごとく、ヨドバシカメラやビックカメラなどに提案しました。ただ、価格がそれなりにするので、何度も例に出して申し訳ないのですが、たとえば鳥取のヤマダ電機の店舗にこの製品をドンと入れるのはどうかなという思いもありました。
僕はすごい製品だと思っていましたが、日本の人たちがそこまで高いお金を出して買うのか、少し自信がなかったので、基本的にはヤマダ電機の「LABI」のような駅前店や、ヨドバシカメラ、ビックカメラ、あとは他の量販店でも10店舗ぐらいでプレゼンをしていきました。
ただ、製品が新しすぎて似たような製品が他にないため、バイヤーからは「初めて聞く、そんな製品」という反応なんです。前例がないと、どれぐらい売れるか判断ができなかったんです。
そうですね。
僕も、高いのは高いので、どうかなと思っていました。それで、読み間違えたのは、前回お話ししたように、ヘッドセットやスピーカーと違って、本当に同じ物がなかったんですよね。
世の中に。
バイヤーも、控えめな数量を提示してきました。僕も「もっと絶対に売れますよ、在庫をもっと持った方がいいですよ」とは言えませんでした。
言い切れませんでしたよね。
特にこの製品は、売れなくても返品できないという条件を最初にしていたんです。
はいはい。
前に、Simplismの回で言ったかもしれないけど、売り場を刷新するために売れ残ったものは引き取り、その場所に新商品を置くという「新陳代謝」をやっていました。でも、こういうハードウェアの場合は、量販店側も「基本的には返品しない」という暗黙の了解があるんです。
ふんふん。
返品はできないという前提での商談だったんですね。
うん。
返品できると、バイヤーも入れやすい。
そうですね。
(売れなくて)だんだん困ってきたメーカーは、そういうことをやるんですよ。ハードウェアで通電していても、うちのは特別に返品も受け付けるので、もっと入れさせてください、みたいなことを言ってくるんです。
う〜ん。
Jawboneの場合、メーカー側が返品を受け入れてくれないんですよ。僕らも返品ありきで話を進めちゃうと、自分たちのリスクが高過ぎるので、返品なしの条件でも、バイヤーが入れたいと思わせるプレゼンをしなきゃいけない、という状況でした。
ただ、新しすぎたこともあって、最初の商談では、いわゆる基本的な導入として、「各店舗に5個とか10個ずつぐらいのものを置きましょう」という話になったんです。自分も強気でいけなかった部分もありましたし、まだ商品の魅力が伝わってないな、と感じたところもありましたね。
返品がないのに、強気にいけなかったのは、損させたくないという思いだったんですか?
結局、返品ができなくて、売れ残ったら量販店が損をするわけですから。こちら側が博打を打って、向こうにだけすべての責任を負わせるのは違うだろう、という思いがありますし、実際、あまり困らせてはいけないと思っています。
結構これ、BtoBの社長とBtoCの社長同士でも考え方が分かれる気がしますね。
そうなんだ。
BtoBの方は、長い付き合いだから、その場の商品で儲かるかどうかだけじゃないよねっていう。
そうですね。
BtoCだったら、リスク考えず、これ売れますよって、勢いで売っちゃうって結構あるなかなって。
そうだね。バイヤー自身もどれだけ売れるか分からないし、僕も「絶対にこれくらい売れる」と自信を持って言えるわけではなかったから、バイヤーが基本的な仕入れをするという判断については、それ以上強く押すことはできなかったんだよね。長い目で見て、長期的に売っていくものではあるので、トリニティとしては多めに在庫を手配していましたが、量販店側での展開はまだ少なかったという状況です。
はい。
実際、店舗数も限られていましたし、在庫展開も少なかったんです。製品を理解してもらうために、映像を流して「こういうものですよ」と伝えるといった工夫はしました。ただ、製品のパッケージだけを置いても、何なのか分かりませんからね。特にJawboneはアメリカのデザインブランドらしく、パッケージにはほとんど説明がなかったんです。
う〜ん。
実際、プレスリリースを出してWEBサイトを公開した上で、蓋を開けてみると、予約がものすごくたくさん入りました。本当に、思っていた10倍はきたと思います。まず最初は、ネットユーザーが中心でしたね。お店に展示する前の話ですから。
うん。
ネットユーザーからの予約が、ヨドバシカメラやビックカメラ、Amazonなどに一気に殺到したんです。トリニティのオンラインストアもそうだったのですが、うちは他の量販店と競合しないようにしていたので、量販店の方が圧倒的に受注が多かったんですね。
リリースしてから1〜2時間経った後、バイヤーから電話がかかってきて、「このJawbone UP、やばいんですけど」と(笑)
予約注文がすごかったんです。うちに発注していた分、もちろん流通経由で発注していた分ですが、それが一瞬で終わってしまって、もう入荷したものだけでは全然足りないくらいになってしまった。
「これは大変だ、追加発注します」といった話になりまして。それが10個とか20個ではなく、1,000個単位だったんですよ。
え〜!
彼らも、こんな短時間で一気に注文がくるのは初めてだったんだと思います。「ちょっと追加注文します」という話が出てきて。実際、僕らがJawboneに発注していた数量よりもさらに受注が多かったので、全然数が足りないという状態になってしまいました。
それは、そうとうリリース派手にしたんですか?
いやいや、トリニティは広告宣伝費はほぼ使ったことがないんですよ。
うん。
広告出したりとか、そういうのはしていないですよ。
うん。
なので、普通にWEBサイトとか自社のSNSなどで発信しただけですね。
なにかプレスリリースとか。
プレスリリースはもちろん出して、それぐらいですね。
それだけで。
そう。だから、僕自身は強気になっていなかったけれども、他にまったく同じものがないという点で、機能とデザイン、アプリも含めたすべての製品が、日本のユーザーにしっかり響いたということだったんです。
え、これ、いろんなメディアがそのリリースを拡散してくれたとかではなくてですか?
あぁ、もちろん、そういうのをしてくれたんだよ。
そうですよね。
ということで、すごく売れたのですが、売れすぎて困ることも結構ありました。バイヤーも最初は「自分がもっと仕入れておけばよかったな」という話ですよね。
それは、そうですね。
だけれども、これは推測だけど、量販店って「受注残」と言ってお客さんから注文きてるのに在庫が足りないというのは、バイヤーはマイナス評価なんだよね。
ん〜、なるほど。
需要予測をして、適切な在庫を持つこと。もちろん、逆に余らせないことも大事です。たくさん注文を受けているのに、全然入荷予定がない、といった状況では「どうなっているんだ」と、管理部門や上司から言われることになります。これは機会損失にもなりますし、「バイヤーがちゃんと手配していなかったんじゃないか」という話にもなりかねません。
最初は驚きで追加発注をしていたのですが、日々どんどん受注が溜まっていってしまったんです。それでたぶん、社内で相当怒られたんだと思います。
はいはい。
やっぱり数万円の製品がこんなに売れるってあんまりないから。
そうですね。
Appleの製品とかはまた別ですね。Appleの製品は逆に売り切れないほどの在庫を買わされるから、在庫切れはないと思うんですけど。おそらく、こういうことってあんまりないんですよ。それで、すごく上の人から怒られてしまって。最初はさっき言ったみたいに、自分のせいでもあるっていうところがあったのに、「いつ入ってくるんだ!」とだんだん怒るようになってきて。
こっちも、自分たちがメーカーでもないから、Jawboneの入荷とか出荷とかの情報を聞いて言うしかないんですよね。
うんうん。
もちろん、アメリカに追加発注したり、「じゃあ、いつごろ出せる?」って聞いたりしました。実際、中国で作っていたので、中国から直送で来るんですが、いつ頃出荷できるのかを確認するわけです。ただ、これ、アメリカでもめちゃくちゃ売れていたんですよ。
ふんふん。
だから、Jawboneも当然、自国ファースト、つまりアメリカファーストなんですよ。これはまあ、しょうがないことではあるんですけどね。ただ、こちらに対しての返事が、どうもあまりなかったりするわけです。
これもよくよく考えてみれば、Jawboneは急にアメリカでめちゃくちゃ発注がきて、日本からもすごい追加発注がきている。中国に発注はするけれど、中国の工場は1日2日で納期回答してこないんですよ。だって、部品を発注して、納期を把握して、組み立てて検査して、「いつ出荷できるか」がわかるまでには、だいたい1週間ぐらいはかかるんですから。
うん。
Simplismのフィルムなんかだったらそんなに難しい話じゃないけど、こっちはセンサーだなんだと、いろいろあるわけじゃないですか。そうなると、冷静に考えると、そんなにすぐ返事はこないんですよ。
はいはい。
だけどバイヤーから毎日「納期いつですか?」って詰められてるからね。「いや、ちょっとまだ回答ないんですよね」って言うんだけど、「そんな無責任な態度でいいんですか? お客さん待ってるのにお客さんに案内できない状態でいいんですか?」みたいなこと言ってくるんですよ。
はい。
でも、こっちからすると、「そんなに売れると思わなくて発注しなかったのは、そちらの判断でしょ」という気持ちはあるんです。ただ、やはり量販店の方々の力は強いですからね。あと、いつも言っているように、途中に流通を担ってくれているソフトバンクのSB C&Sという会社が入ってくれていて、そこの人たちもめちゃくちゃ怒られるんですよ。
うん。
何も悪くないのに。ふざけんな、みたいな感じで。
若干、時系列違って発売当初の話ではないんだけど、その後もずっとそういう話があって。それで僕が一応、向こうからするとメーカー代理店の社長だから、「謝りに来るならお前だろ」ということになるわけですよね。
はいはい。
それで、僕とSB C&Sの担当者とで、ほぼすべての量販店に謝りに行ったんですよ。ある量販店に行ったときも、結局は「納期がいつになるんだ」という、電話やメールで話しているのと同じ話になるんですよね。そこへ行っても、答えは一緒なんですけど。
はいはい。
「お客様を困らせるんじゃないぞ」ということを言われるんですよ。それで「次の入荷いつだ?」「ちょっと先です」「その在庫は俺たちのところに全部回すんだろうな」みたいな。
うんうん。
でもこちらからすると、他の量販店もあるし、そこの会社に全部回すわけにはいかないですからね。
それはそうですよね。
「いや、ちょっと他もあるんですよね」と話すと、「それはおかしいだろう。うちを先に出してくれ!」って言ってくるんです。理不尽ですよね。その人もめっちゃ上から怒られてるから必死なんですよ。それで、すごい怒るんですよ。
うん。
たぶん、これはもう結構社内では語りぐさだったけれども、2時間ぐらい怒られたんですよ(笑)
へぇ。
こっちの回答はもう、「いついつが次の入荷で、何個ぐらいを御社に納品できます」と。それなのに「その入荷数全部、よこせ」「いや、ちょっとそれは無理」と。「じゃ、その次の入荷はいつなんだ?」
はい。
こっちも知らないから「いや、ちょっとまだ回答がありません」
はい。
すると「ふざけんな! そんな責任感のなさでいいのか」というので、めっちゃ怒ってくるんですよ。
はい。
さすがに、人は2時間怒り続けられなくて、途中で落ち着くんですよ。ある程度怒った上で。でも何かの拍子にまた怒るんですよ。
火が付くんですね。
そう。それで、僕と流通の担当者とで、こちらはもう話すことは終わっているから、解放されるまではただ怒られるだけで、「そうですね」とか「すいません」って言うしかないんだけど。
僕もずっと、テーブルの上にあったコーヒーの缶、「微糖」って書いてあるんだけど、その「微糖」の画数を数えてました。1、2、3、4……って。だって、他にやることがないから。
やれること全部やりきりましたし。
他のことやると怒るから。iPhoneとか出して何か見ようとしたらもう怒るし。
そりゃそうですね。
だから、少し下を見ながら、ずっと「微糖」の画数を数えていました。それで、たまに「聞いてるのか(怒)」みたいになるんで、「聞いてますよ」と言って。なぜだか本当に2時間も怒られて、これはちょっとかなりリアルな話なんですが、「じゃあ、次の入荷はあれだけど、その次の入荷全部うちによこせ」というのを、そのバイヤーがずっと言ってくるんですよ。
はい。
それで、流通の担当者が「はい、わかりました」って最後に言ったんですよね。それで「書け」と言われて書いたんですよ。ようやく、それで帰れるわけです。「書いて良かったんですか? 全部は卸せないですよね」って言うと「いや、書くしかなかったし、書かないと帰れなかったからね」と言ってました。
結局、その会社にだけ卸すわけじゃないから、また怒られるんですよ。「他にも入ってんじゃねーか」って怒られて、また行って。本当に何回行っただろうな。何回も呼ばれて、何回も謝らされるんですよ。
こうやって冤罪が生まれていくんですね(笑)
冤罪かは分からないけど。
追い詰められて、追い詰められて、やりました〜って。
しかも、一度は本当に「どこに行っても在庫がありません。御社だけでなく、どこも同じ状況なんです」という話をして。さすがに、それは仕方がないと思ってくれたのか、少し静かになったんです。
うん。
そのときに、もう一人のバイヤーのアシスタントっぽい人がネット検索したら、他の量販店で在庫が見つかって。「あんじゃねーか、このやろう!」って(笑) ヤベーみたいになって。
(笑)
しかもその当時はS・M・Lというサイズ展開があったんですよ。
はいはい。
ちょっと太っている人だとLじゃないと入らないとか、時計のバンドとかもサイズがあるじゃないですか。S・M・Lとあって、最初はテクノロジー好きの男性が買っていたんです。そうなると、Sは僕でも入らない、基本は女性向けだから。それが売れ残っていたんですよ。
それで、バイヤーが納期の話をしたときに、「じゃあ、うちに在庫がちょっとあるSを、御社に入れますけどいいですか?」って言ったら、「Sはいらねーんだよ!」みたいな(笑) またすごく怒られて。ですよねって(笑)
(笑)
いや、僕もこれまで20年ぐらいやってきた中で、あそこまで怒られたり、謝らされたりしたのはなかったと思いますね。今思えば笑い話ですけど。
憂鬱ですよね。そこに行くのは。
「リアル経営」なので、リアルな話をしてますが、正直もっとヤバい話もあるんですよ。ただ、さすがにそこまで話すと、どの会社で誰だ、というのもバレてきちゃうので、この辺だけでもすごい話だと思っていただければ。
はいはい。
という形で、本当に需要がもともとの想定を上回ったんですが、後にさらに問題が起きます。これが製品の「不良問題」です。
うわぁ、一気に売れたから、量産体制がちゃんと整ってなかったんですね。
そもそも設計が甘かったと僕は思います。特に前回お話しした初代のモデルは、イヤホン端子に接続するので手首全体を覆うんだけど、曲がってるんでね。曲がってるところをぐっと広げてiPhoneのイヤホンの端子に差すんだけれど、そこが内部で折れやすかったんです。
見た目上、折れてないんだけれども、そこで信号が途切れちゃうというのがすごくあって、同期できなくなっちゃうというのがあったんだよね。
ふんふん。
それ以外にもいろいろ、急に動かなくなるみたいなのが出てきて。最初の頃でも、本当に30%ぐらいは不良でした。
結構な量ですね。
しかも結局その根本の原因は、最初の頃は全然分かってなかったんだよね。
月に何個ぐらい売れてたんですか?
波があって、入る時と入らない時があるんですけど、10万個とかですね。
じゃあ、3万個の不良処理が、あったということですか。
さっきは「返品できない」という話でしたけど、不良品ですから、これはもちろんJawboneに保証してもらうしかないのですが、交換品が入荷してきても、その交換品の中でも30%ぐらいは壊れてしまうんですよ。
あぁ、3万個の、その次も1万個みたいな。その間にまた新しいのが売れて。
そう。
じゃあ、どんどん増えていくわけですね。じゃあ3万個の不良品があったら、その次は4万個になってるみたいな、不良品の量が。
そうですね、もうサポートが延々と終わらないんです。それまでにはなかったものだったという点と、腕に付けるのでどこかにぶつけるといったこともあるので、これまでにはない耐久性が必要だったんだと思うんですけれども、おそらく充分なロードテストというか、実際に使ってみてという点が足りていなかったのではないかと。
もちろん、買った瞬間に壊れているわけじゃなくて、1ヶ月ぐらいしてから壊れるんですよね。
うん。
というのもあって、初代なんかはアメリカでも大問題になったんです。メーカーのJawboneのCEOであるホサイン・ラーマン(Hosain Rahman)さんが、「全部交換します。新しいものに」と。「購入して、今壊れていなくても後で壊れるかもしれないから、解決策を用意するので待っていてほしい」と伝えたんです。
ふ〜ん。
その分、お客さんが望めば、お客さんの都合であっても返金もしくは交換するという対応をしました。特にアメリカの場合は、このようなスタートアップの失敗があったとしても、今のようなしっかりとお客さんに向き合う対応が、結果としてすごく賞賛されたのです。
うんうん
壊れてないものまで、返金するという話にしたから。
ふんふん。
相当なお金を使ったと思いますよ。普通は壊れたものだけ返金するじゃないですか。だけど、さっき30%と言いましたけど、実際はもっと多かったですし、交換品も壊れていたので、さらに多かったと思います。それでも、普通に使えているものでさえ返金対応するという話にしたんです。
メーカーはいいかもしれませんが、僕らのほうは、返金するにしても、返ってくるものも着払いで戻ってくるので、コストがかかるんですよ。倉庫だって、外注している倉庫は入荷してくる個数を数えるだけでもお金を取られますからね。
うん。
伝票処理だけでも、すごく大変でした。僕も、やっぱり自信を持って、これは素晴らしいと思って売ったのに、壊れてしまったんです。「じゃあ交換品を送ります」と対応しても、「それも壊れちゃった」みたいなことがあって。それで、改良したと言っても、実はそんなに30%も改善しなかったかもしれません。それなりに問題があったんだよね。
結局、回路を作り直したり、ハードウェアを直しても、実際にロードテストをするのには何か月もやらないといけないじゃないですか。一応、WEBビデオで「どういう耐久性試験をしているか」というのをアピールするようなものは作ったりしていたんですが、結局、不良率はほとんど下がらなかったんです。
ふ〜ん、キツいですね。
それで、「UP2」という、前回お話しした、デザインがかなり変わったモデルは、腕に巻く曲がる部分には回路が一切入っていないんです。電気回路が入っているのは、手首のほぼストレートな部分だけ。バンド側は、いわゆるエラストマーという普通のゴムバンドになったので、そこが根本的に変わって、壊れなくはなったんですよね。
ふ〜ん。
でもそれは「UP2」という次の世代に来てようやくなんだよね。
2年後と言ってましたっけ?
そうそう。
2年間ずっとそれが続いたんですね。
本当、これは相当でしたね。
資金調達周りの話ですが、次回、お金のことや諸々、Jawboneの会社がどうなっていったのかという話をしようと思っています。たくさん資金調達をした以上、やはりどんどん売上を上げていかなくてはいけません。一度つまずいたけれども、改良して進めていかなければいけないという状況がありました。一方で、僕自身は、自信を持って商品を売ることができなくなってきていたんですよね。
う〜ん、それはそうですね。
それはやっぱり、たくさんのお客さんが僕のプレゼンやデモを見て買ってくださったのに、壊れてしまって、交換品を送ってもまた壊れてしまう、という状況があって。自分としても、これはかなり厳しいなと感じていました。
この不良の部分が完全に直らないと、もちろんパーセンテージの少ない不良は別としても、やっぱり3%とか1%以下ぐらいに抑えてもらわないと、ビジネス上だけじゃなく、評判としても無理だよね、という話になって。実際、不良率が30%を超えていた頃は、もうめちゃくちゃ叩かれていましたしね。
うん。
僕としては、製品がしっかりするまでは、いったん立ち止まって、あまり展開しないようにしようと思っていました。お店などでの展開をね。ただJawbone側は、「改良されて不良率が下がってきているんだから売ってくれ」と。UP2もいろいろ変わっていますし。ただ、僕としては、まだそれに確信が持てなくて。自分も含めてもう少し耐久性が分かって、完全に自信が持てるようになったら再展開しましょう、としていたんです。
けれど、Jawbone側も最終的に会社が大きくなって、いろいろ、CatalystとかBlueloungeのときも言ったとは思うんですが、もともといた人たちとのコミュニケーションも減ってきてしまいました。
うん。
最終的にJawboneが「トリニティが言うことを聞かない」ということもあったりして、それなりにめちゃくちゃ売れたから、日本という市場はまだ大きいし、いけるということで、自分たちでコントロールしたくなってきたわけですね。
これは、輸入ビジネスのリスクの話とちょっと近いと思うんですけれども。それでファーストとして、日本に住んでいる日本人のエージェントを一人、Jawboneが僕らと関係なく直で雇用したんですよ。「トリニティ経由の報告、本当なのか」ということも含めてね。
セカンドオピニオン的な。
そうそう。よくあるんですね。こういうのって一人だけ直接雇用の人がいて、マーケティングとか戦略だけ本社側の意向を受けてやるみたいな人ってちょこちょこあるんですけど。そういう感じで。その人はその人なりに頑張ったのかもしれないんですけれども、僕らとは意見が合わず。
その人のミッションはやっぱり「売上をもっと上げる、展開をもっと広げる」というところだったんで。代理店変えましょうみたいな話になったんだと思う。
ふ〜ん。
それで、その人ともともと繋がりのある会社を紹介したんです。その人経由で、たぶん、Jawboneときちんと話をした上で、「トリニティから移管しましょう」という話が向こうの中で行なわれたんだと思います。もちろん、契約上は何ヶ月か前に言えば移管できるという契約になっているので。その移管先の会社も、すごくいい会社なんですよ。
はい。
すごく良い、伝統的な会社で。他でも代理店の移管はやってきたんですが、Jawboneのこの製品は、トリニティじゃなくてもっと売れる、全国展開がもっとできるということだったんだと思います。その話をした上で、大きなビジネスになるというところもありました。我々に対しては、普通は前にお話ししたように、代理店の権利を持っていかれると、その会社はすごく傾いてしまう場合が多いんですよね。
そうですね。
特にこれぐらい大きなビジネスをやっている場合は。それで、向こうもトリニティから大きなビジネスを奪うというところもあったので、僕らの抱えている多少の在庫や不良品も買い取るし、今後のサポートも全部責任持って自分たちでやりますと。お客さんからのもそうですし、量販店からのものも含めて全部やるので、円満に移管してください、と。これ、結構揉めることもあるんですよね。
そうですね。
嫌だみたいなことや、市場に何か悪い話を出してしまうことなどですね。
売り上げがかなり大きいとなると、もう会社の存続に関わってきますもんね。
そうそうそう。前に言ったけれどもね、僕が前にいた会社はそれで倒産してるからね。こっちは正直、今切り替え時だなと思っていて。実は「渡りに船」だと思ってたんですよ。
ふ〜ん。
製品のコンセプトは本当に素晴らしくて、僕も大好きだったんですよ。でも、だんだんオリジナルでプロダクトを作っていた人やイヴ・ベアールも含めて遠い存在になってしまって、製品も自信を持って売れるものではなくなってきていました。
そんな時に「1年、2年計画でこれだけやってほしい」という話がきたんです。正直、それはちょっと無理だなと思っていたところだったので、「渡りに船」という気持ちではあったんですが、交渉事なので「ちょっとそれ困るんですけど」「うちの売上、結構落ちちゃって、どうしようかな」みたいに、少し演技を入れました。
うん。
相手が「もう、こういうことも全部ちゃんとやりますから、円満に引き継ぎしていきましょう」という感じできたので、こちらの言い分をすべてのんでもらい、向こうに移管したんですよ。
はぁ。
なんでこっちはちょっと悲しい風の、ビジネスもっていかれた風だったんだけど、その裏ではどうぞどうぞ。
(笑)
正直なところ、実際には移管したあと、全然売れなかったんです。店舗展開も、さすがにバイヤーたちもやってくれなかったし、あまり展開できなかったんですよ。それで、トリニティが輸入して売っているんですが、返品は彼らの方にいく形になっています。
すごい。
その結果、僕らはリスクがゼロになったんですよ。一方で彼らは返品を受け入れることになった。本来なら何十億円という、もっとすごい売上になるはずだったのが、おそらく数億円程度しか売れず、さらにトリニティが販売した分の返品が一気に発生したんです。
ただ、事前に「トリニティが売った分も、お客様や量販店の流通にある在庫もすべて引き取るから、販売権を移管してくれ」という話になっていて、もちろんちゃんと契約もしていました。だから、向こうとしては「話が違うじゃないか」と。これは僕らに対してではなく、Jowboneのエージェントに対して、たぶん揉めたと思いますね。
ちなみに、その時のトリニティとしては、売上の何パーセントぐらいがこのJowboneだったんですか?
覚えてはないけれども。自社ブランドは50%ぐらいあって。それでJawboneは、たぶん利益率で言うと10〜15%ぐらい。
低い。
特にハードウェアの中でも、通電物とか電子機器は、輸入代理店の利益は低いんです。だから、売上はあまり覚えていませんが、10億円くらいはいったと思います。ただ、利益率はすごく低かったですね。
そうですね。1個あたりに2、3,000円しかないということなんだろうと思います。それで30%の返品対応をしていくということなんですね。
そうですね。だからビジネスとしてはもうやれないと思っていましたし、自分としても情熱を持って取り組むことは難しかったんです。なので、ちょうどいい形で移管しました。結局、返品リスクがないから、売ってしまっていたので終わりで、その後のサポートも必要ありません。利益としては最終的にちゃんと残る形で、後腐れなく終わるということですね。
ふふふん。
「持っていかれた」という体でやっていたので、こっちも「かわいそうでしょう」みたいな感じになってしまって(笑)
製品としてはUPはすごく売れたんですが、すごく不良品が多くて。トリニティとしては、最終的に輸入代理店を移管するという形でJawboneとの関係は終わりました。
これは、Jawboneを始める最初にお話しした通り、突撃していって始めた頃からすると、最終的には我々もやる気がなくなってしまい、代理店を移管して終わるという結果になったんです。
という奇跡的な運要素。強いですね、最後の終わり方。
そうね。これ逆に代理店移管するって向こうから言ってくれなかったら、結構困ったと思うね。
そうですね。何億円単位で損失出てそうですよね。
結局、時間と共に不良品が増えてしまいました。売上を減らしてしまうと、マイナスが本当に増えていってしまうので。僕も大好きだったブランドで、大好きだった製品たちだったのに、このような終わり方になってしまったのは悲しいですが、トリニティのビジネスとしては、一番いい形で終えることができました。
うん。
というわけで、製品が売れてから終わりを迎えるまでのお話をしました。次回は、Jawboneという会社がUP以降にどういう変化を辿ったのか、それを間近で見てきたからこそわかるあれこれを話して、最終的にJawboneというメーカーの終わりについてもお話しできればと思います。トリニティとしての終わりは、先ほど申し上げた代理店の移管によって終わるんですが、Jawbone自体もその後に終わりを迎えます。
破産してしまうまで。
そうですね、最終的には破産したというところをお話ししたいかなと思います。
はい。なんか、締めくくりになりそうですね。次が。
そうですね。来週またお楽しみに。
よろしくお願いします。
リアル経営|企業経営の成功と失敗。等身大で語る台本なき社長のリアル」
概要欄にこの番組のWebサイトへのリンクを張っております。 感想、メッセージ、リクエストなどそちらからいただければ嬉しいです。
毎週金曜朝6時配信です。ぜひフォローお願いします。
ここまでの相手は、Hossyこと星川哲視と
がじろうでした。
それではまた来週、お耳にかかりましょう。
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