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星川哲視(Hossy)の個人サイト Hossy.org は、これまでの起業・経営・卒業など、さまざまな経験からの情報をブログ記事やPodcastなどさまざまな活動を通じてアウトプットするサイトです。

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Episode 30|「ブランドストーリーのリアル|NuAns NEO [Reloaded]編」【Part 3】ハードウェア開発の舞台裏。

【エピソード概要】

NuAns NEO [Reloaded]の主要ハードウェアであるカメラ、指紋認証、ディスプレイの舞台裏を語る。

ソニー、シャープ、AGCなど日本メーカーの部品採用をめぐる苦闘、デザイン上の制約。

そして、シャッター音の無音化に込めた独自のこだわりについても熱く語る。

ハードウェア開発における理想と現実、品質担保の葛藤が今、明らかになる。

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    Topic

    オープニング

    Hossy

    リアル経営|企業経営の成功と失敗、等身大で語る台本なき社長のリアル」

    この番組は、私、Hossyこと星川哲視が自らの体験をもとに、経営やその舞台裏などをリアルに語っていきます。

    リアル経営は、毎週金曜日朝6時に配信しています。

    Hossy

    おはようございます。自由人のHossyこと星川哲視です。

    がじろう

    おはようございます。STRKのがじろうです。

    Hossy

    はい。今回で30回目らしいですよ。

    がじろう

    これ感覚的にはそんなにいってるの? っていう感じですよね。

    Hossy

    ちょっとびっくりですね。

    がじろう

    52週とかで1年ですもんね。

    Hossy

    そうそう。

    がじろう

    だから半分以上もいってると。

    Hossy

    なんかそんな感じもしないし、まだ過去を振り返っている状態というのが、いかにいろいろな要素を含んでいるのかという話もありますよね。まあ、20年くらいの間にいろんなトピックがあったり、そのトピックの中でも今回はNuAns NEOシリーズみたいに裏のストーリーがすごくあったりとか。だからこれ、1年経って振り返り終わってなかったらどうなるんだろう、みたいな。

    がじろう

    いいじゃないですか。それはそれで。

    Hossy

    僕の振り返りだから、僕が語るところは僕しか語れないんで、がじろうは話を聞くだけなんですけど、ここら辺が終わったら、もうちょっとディスカッション寄りとか、がじろうの意見ももらいながら、経営に関わる話に広げていけたらなとは思ってます。

    いずれにせよ、10回、20回の時にはあまり言わなかったんですけど、なんとなく30回だなんていうところで、感慨深いものは多少あるなというところですかね。

    がじろう

    Hossyさんにそう言ってもらえるとすごくやりやすいんですけど、自分の役割って何なんだろうとかずっと考えながら、相槌ぐらいしか打てないし、実際のものを聞いてみると、自分の相槌が下手すぎるなと感じて少しテンションが下がったりしました。「こんなに俺、相槌下手だったかな」みたいな(笑)

    Hossy

    あ、そう?

    がじろう

    まずはちょっとまとめて。

    Hossy

    そうですね。

    がじろう

    整理して。それでは本日は?

    Hossy

    はい、ここまでNuAns NEOの第2世代、NuAns NEO[Reloaded]についてお話ししてきました。前回少し予告しましたが、ハードウェアの部分には、面白い話や苦労話がたくさんあります。そこで、いくつか重要なポイントを絞ってお話ししつつ、時系列にこだわるよりも、「ここだけはぜひ話しておきたい」という点を中心に、少しずつお話しできればと思っています。

    がじろう

    はい。

    カメラ開発の裏側

    Hossy

    それで、まずはハードウェアについてですね。一つ目はカメラです。初代の時にも少しお話ししたかもしれませんが、カメラはやはり重要だと考えています。僕らが今、iPhoneやAndroidなどのスマートフォンを使っている人に「何に使っていますか?」と聞いたとき、必ず上位3つに入るのが写真だと思うんですよね。

    やはり、日常的に持ち歩き、何かあった時に記録する。たとえば、料理を食べる時、どこかへ行く時、誰かと会う時など、カメラで撮るというのは非常に重要な機能だと思っています。特に初代の時は、あまりそこにフォーカスしていませんでした。そこそこ撮れればいいか、というくらいに思っていました。

    そもそもWindows 10 Mobile上でカメラを細かく作り込むという点で、ハードウェアとファームウェアといって、カメラをハードウェアから制御してOSに持ってきてカメラアプリに渡すっていう部分の成熟度が足りていませんでした。正直なところ、ほとんど何もできないような状態だったんです。

    がじろう

    うん。

    Hossy

    それはもう、初代の時にも同じように思っていたんです。自分でも、このカメラで日常を撮るのは嫌だな、と感じることもあったので、今回の第2世代では何とかしたいという思いがありました。それで、まずカメラというのは、iPhoneの発表などでもそうですが、「こんなにいいカメラを積んでいます」というところから話が入ってくるわけですよね。

    がじろう

    はい。

    Hossy

    「こんないいカメラです」という点でいうと、発表では言っていませんが、Appleも実際、たとえば今のiPhoneではソニーのカメラを使っているんですよね。

    がじろう

    はいはい。

    Hossy

    センサー、といいますけど、このソニーのセンサーが今、世界トップシェアなんですよね。

    がじろう

    へぇ。

    Hossy

    いろんなスマートフォンがありますよね。サムスンとか、もちろん他にもいくつかあるんですけど、サムスンはさすがに自社のものを使っているのかなと思いますが、Appleも含めて、ソニーのセンサーを使っている機種がかなり多いんですよ。

    がじろう

    はい。

    Hossy

    当時も、それなら僕らもソニーのセンサーを使いたいと思ったんです。初代のモデルは正直、こちらから指定していなかったので、適当というと申し訳ないんですが、ODMの会社が提案してきたものを使っているんですよ。

    がじろう

    そもそもが、もうBtoBにすごく寄せているという。

    Hossy

    それもありましたね。それで、第2世代では、やっぱりもっとデジタルライフを中心にするならカメラは必須だろう、という考えがあったんです。だから、ソニーのセンサーを使いたい、というのがあったんですよね。その当時、今もそうなのかもしれませんが、ソニーのセンサーはすごく売れていました。いろんなメーカーから採用されてたので。

    がじろう

    うん。

    Hossy

    まず普通に、ODM、つまり中国側で「ソニーのこういうセンサーを使いたい」という依頼をした時に、そもそも手に入らなかったり、納期が1年以上先になったりといった話が出てきて、それだと採用しづらいな、という問題に直面したんですよ。

    これは、リアル経営なので、言っていいか確認していませんが、言っちゃいますけど。

    がじろう

    (笑)

    Hossy

    本田雅一さんの人脈で、本田さんは当時ソニーの社長だった平井さんと仲が良かったので、初代スマホの話をされていたそうなんです。そして、第2世代ではAndroidでやることになり、その時に「カメラのセンサーはソニーのものを使いたい」と。ただ、通常のルートだと、先ほど言ったような納期の問題や、そもそも購入できないということもありました。「採用したいのにね」という話をしてもらったんです。

    がじろう

    ふ〜ん。

    Hossy

    そうしましたら、ソニーといってもソニーグループの本体ではなく、このセンサーを扱っているのは子会社なんです。そして、その子会社の社長を紹介してくれたので、トップ中のトップの方に話ができました。その社長経由で現場に話を通してもらった結果、採用させてもらえるということになりました。

    がじろう

    うん。

    Hossy

    ソニーにはXperiaというスマートフォンがあります。このカメラのセンサー自体は、ソニーのスマートフォンであるXperiaで使う予定だったもので、多少余裕をもってセンサーの割り当てをしておくんですね。それで、その分の余りという言い方も変ですが、それを使わせてくれるという話になったんです。

    結果的に、ソニーのセンサーを採用してカメラを構築できることになったんですね。つまりセンサーとしてはXperiaと同じものを使っているということです。

    がじろう

    めちゃくちゃいいですね。

    Hossy

    Xperiaといってもハイエンドではないんですが、Xperiaで売られているものと同じですから、まず素性としてのハードウェアは悪くないということになります。実は、センサーがいいだけでは、カメラはいい仕上がりの写真にならないんですね。そこで重要になるのがファームウェアです。

    先ほど言ったように、センサーからデータを持ってきて、それをどのようにカメラアプリに渡し、最終的なデータとして出力するか、といった処理があるんです。

    がじろう

    はぁ。

    Hossy

    もともと、Androidで使われるエンジン、SoC(System on a Chip)といいますが、そのエンジンを作っているクアルコムという会社があります。この会社が作っているのがSnapdragonという名前のSoCです。初代もそうなんですが、初代には617という番号、2代目には625という番号のSoCが使われているんですね。

    そして、このクアルコム社が、カメラのドライバー、つまりカメラを動かすためのソフトウェアを提供してくれているんです。

    がじろう

    ふんふん。

    Hossy

    その中で調整ができるんですけれども、普通の大手企業は、それを独自で開発するんですよ。ソニーとかAppleはもちろんそうですし、もう大手はみんな、そのソフトウェアを自分たちで作るんですよね。

    がじろう

    そこで相当大きく変わるってことですか。

    Hossy

    そうです。全然違うんです。

    がじろう

    ということなんですね。そのセンサーの部分だけは、たとえ外部の製品を使う会社であっても、自社で開発しているんですね。

    Hossy

    センサーも作っているスマートフォンメーカーって、基本的にはないですよね。今はHuaweiとかはもしかしたら作っているのかもしれませんけど、ソニーはセンサーを作って、スマートフォンも作って、おそらくソフトウェアも作って、というのを自社で全部やっていると思います。

    でも、クアルコムのソフトを使って行なうんですが、どうやるとチューニングがうまくいくのかが全然分からないんですよね。

    がじろう

    はい。

    Hossy

    それで、撮った写真はあまり良くない。ODMのエンジニアには言いますが、彼らもソフトウェアエンジニアだから、どうしたら良くなるのか、そのあたりが分からないみたい。

    がじろう

    ハードとの繋ぎ合わせのところが。

    Hossy

    そう。ソフトウェア上で、「このパラメーターをこうすればこういう結果が出る」とかってあるけれども、画作りっていう意味のその芸術性はないですからね。

    がじろう

    うん。

    Hossy

    それで、本田さんは以前にも少し話した通り、オーディオビジュアルにも造詣があり、テレビやプロジェクターといった画の評価もやっている人なんです。

    そこで、出てきた画を評価してもらうのですが、「全然ダメ」といったフィードバックが多々ありました。そして、何をどうすればどうなるかという部分については、本田さん自身、「出てきたものの評価はできるけれど、その領域は分からない」という立ち位置でした。いろいろ試行錯誤したんですが、正直なところ、出荷時にはそれほど良い画にはならなかったんですよ。

    がじろう

    う〜ん。

    Hossy

    時間の問題もありましたからね。オートフォーカスってありますよね、自動的にフォーカスを合わせる機能。ここらへんも、実は各社がノウハウを持っている部分なんです。カメラをアピールする際、普通の一眼レフでもそうですが、「速いオートフォーカス」といった点や、今だと顔認識して何秒で顔にピタッとオートフォーカスが決まります、といったようなことを、各メーカーが独自にいろいろやるんですよ。

    がじろう

    ふんふん。

    Hossy

    このソフトウェアは、もちろん我々だけで独自に作れるわけではありません。オートフォーカス自体はセンサー側に組み込まれているソニーのものを使っているのですが、それでもやはりいろいろな調整が必要なんです。単に組み込んだだけでは、すぐに使えるというわけではありません。我々が実現したいと思っていることを形にする方法が本当に分からないし、中国の開発会社も分からないという状況でした。

    もちろん、外部の、そういうカメラのチューニングをやっている会社に頼むという選択肢もありますね。

    がじろう

    うん。

    Hossy

    でも、もうめちゃくちゃ高いんですよ、億単位になります。なので、出荷時には「これくらいなら問題ないだろう」というギリギリのラインで出したんです。

    がじろう

    ということは、出荷後しばらく経ってから、どんどん良くなっていったということですよね。

    Hossy

    そう。その後にファームウェアで改良しました。センサー自体はさっきも言ったようにいいものなので、あとはソフトウェア側で改善していけるんです。それで日本のアキュートロジックという会社があって、そこがそういうカメラ向けのファームウェアなどを開発しているんです。もともと富士通などの開発をしていたと聞いています。その会社に依頼して、ファームウェアを作ってもらったんですよ。

    がじろう

    うんうん。

    Hossy

    僕もちょっと記憶が定かじゃないんですけど、そこも「自分たちがやってるよ」っていうのをアピールするデモンストレーションとしてやってもらえるということで、我々もこのアキュートロジックにやってもらいました、みたいなことをファームウェアのところでお話しつつ、激安でやっていただけたという経緯がありました。

    がじろう

    なるほど。

    Hossy

    はい。ただ、初代を使っていた人からすると、かなり良くなったという話もありつつも、結局、iPhoneやXperiaなどと比べると、やはりそのクオリティには及びません。そのため、スマートフォンを作る上で一つの大きなハードルとなるのは、やはりカメラですね。

    がじろう

    ちなみにHossyさんがもう満足いくのが、初代は何点で、2代目は何点だったんですか? 

    Hossy

    そうだね。そういう意味では初代は30点とか。

    がじろう

    30点、100点満点で。

    Hossy

    結構低いですね、正直。2代目で修正を加えた上で50点ぐらい。

    がじろう

    50点なんだ。

    Hossy

    なんか、iPhoneをずっと使っていると、みんなシャッターボタンを押すだけで綺麗な写真が撮れるじゃないですか。

    がじろう

    まあ確かに。

    Hossy

    そのプロの知識とか調整とかなくてもね。そこから比べると半分にもいかなかったかなぐらいのレベル。Appleがどれぐらいカメラにお金かけてるか分かんないけれども、まあ数十億円はかけてると思うよ。だって、Appleのここ数年のプレゼンテーションのかなりの割合をカメラが占めるよね。

    がじろう

    う〜ん。

    Hossy

    いかにカメラが綺麗に撮れるのかっていう話を必ずするよね。何十億円なのか100億円くらいかけてるのか分からないけど、いずれにせよ僕らが手を出せるレベルのものではないんでね。なので、これは本当にこれから新しいスマートフォンメーカーが出てきた時でも、ここにお金をめちゃくちゃかけられるっていうことがない限り、厳しいと思いますね。

    がじろう

    ふ〜ん。

    Hossy

    何しろ、人々が多分トップ3に入るくらい重要視するのはカメラですよね。そこが満足できなければ、既存のもののほうがいい、となってしまうでしょう。

    がじろう

    変わりましたもんね。

    Hossy

    そう。で、ここはちょっと僕の中でも難しかったところかな。

    シャッター音を鳴らさない仕様

    Hossy

    カメラの部分については、ある程度やれるところまではやりましたが、妥協した部分もあります。ただ、自分たちの力で変更でき、世の中のニーズも非常に高かった部分、それにアンサーできたのが、シャッター音ですね。

    がじろう

    ほう。どう変えられたんですか?

    Hossy

    カメラって、そのシャッター音が鳴るじゃないですか。

    がじろう

    はい。

    Hossy

    iPhoneだと「カシャ」という音、GoogleのPixelだと「キシュ」のような少し変わった音が出るんです。そういった音が鳴るようになっているんですが、シャッター音については、法的に鳴らさなければならないという決まりはないんですよ。

    がじろう

    ふ〜ん。

    Hossy

    日本において。普通の標準のiPhoneだと、音を出さない設定にしてもシャッター音は必ず鳴りますよね。「カシャ」って。ところが、今、海外に行くと鳴らないんです。以前は海外でも鳴っていたんですが、いつからかは忘れましたが、カメラのシャッター音が鳴らなくなりました。

    ただ、日本に来るとまた鳴るんですよ。これは日本のキャリアの自主規制によるもので、日本のキャリアのネットワークに接続すると、急にシャッター音が鳴るという仕様になっているんです。

    がじろう

    うん。

    Hossy

    シャッター音については、いろいろな考え方があると思います。盗撮防止の話があるにせよ、まず前提として、僕の知る限りでは、日本と韓国以外の国では、設定をオフにすれば音は鳴らないんです。だから、世界的に見れば、音が出ないのが一般的なんですよね。

    がじろう

    日本と韓国って盗撮がやたら多いんですか?

    Hossy

    というか、実際は法律で音を鳴らさないといけないと決まっているわけではなくて、あくまで自主規制なんですよね。だから、僕らが作っているこのNuAns NEO [Reloaded]は、初代も含めてキャリアでは販売していないんです。SIMフリーだから、僕らの仕様は僕らで決められる。でも、キャリアから販売しているものはそうはいかないんですよ。

    がじろう

    うん。

    Hossy

    キャリアが販売しているものって、厳密に言うとiPhoneだろうが、メーカーというより売っているのはキャリア側なんですよね。キャリアの商品として売っているわけです。だから、自分たちの仕様に合わせてもらうのは当然になるんですけれど、僕らは関係ないという考え方の上で、盗撮と言っても、じゃあ実際盗撮事件が少ないかというと、普通にあるわけじゃないですか。

    だってアプリを入れれば、検索すればもう無音にできるアプリが見つかるんです。AppleのiPhoneの純正アプリを使わなければ、もう無音にできるんですよ。ってことは、抑止力がほとんどないに等しいですよね。

    がじろう

    確かにそういう使い方する人にはね。

    Hossy

    そう。だって、盗撮しようと思っている人は無音アプリを使いますよね。やっぱり意味がないんですよ。

    ただ、たとえば日本の場合は話が少し変わりますが、美術館や博物館に行くと、場所によっては撮影禁止のところが多いですよね。でも、海外だと撮影禁止の美術館ってあまりないんです。そこで写真を撮ると、「カシャッ」という音が響き渡る。特にああいう場所って静かなので。

    がじろう

    確かに。

    Hossy

    あとは、レストラン。居酒屋ならまだいいんですけど、少し高級なところだと、「カシャ」ってシャッター音が響くのはちょっと気になりますよね。iPhoneも年々スピーカーの音質が上がってきているせいで、このカメラのシャッター音の音質まで良くなって、すごく響くようになってきています。いらないのに(笑)

    がじろう

    (笑)

    Hossy

    なので、僕はもう、シャッター音を絶対なくしたいと思っていました。だから、自分たちのスマートフォンを作る時には、「シャッター音は鳴りません」というのが、アピールポイントになると思ったんです。今でもiPhoneはシャッター音が鳴りますからね。すごくどうでもいい余談なんですが、僕はカメラ音が鳴らないiPhoneを手に入れるために、毎年カナダでiPhoneを買っているんですよ。

    がじろう

    わざわざ。

    Hossy

    カナダと日本は、いつからかは忘れましたが、ずっと同じ仕様なんですよ。型番もまったく一緒です。だけど、カナダで買ったものは日本に持ってきても音が鳴らない。日本で買うと、型番はまったく一緒なのに音が鳴るんです。

    がじろう

    じゃあ、違う国で買ったら、型番が違うせいで修理も難しい、ということもあり得るんでしょうか。

    Hossy

    修理はできると思いますよ。グローバル展開しているので。

    ただ、たとえばアメリカで売っているモデルもシャッター音は鳴らないのですが、アメリカのモデルを持ってきてしまうと、アメリカのキャリアが使っている周波数帯と日本のキャリアが使っている周波数帯が異なるため、まったく繋がらないというわけではないものの、いくつかの周波数が、電波の基地局から携帯に繋がる際に、通常より足りなくなってしまうんです。簡単に言うと。

    そうすると使い勝手が悪くなって、圏外が増えたり、通信速度が出なかったりという問題が出てくるので、もし購入するならカナダで買うのが一番いいんですよ。

    がじろう

    ふ〜ん。

    Hossy

    カナダで買うものについて、もう少し詳しく言うと、前にも少しお話しましたが、「技適」、つまり日本で使っても法的に問題ないですよという技術適合証明がされているんですよ。同じ型番だから。だから、カナダで買ったものを日本で使うのは合法なんです。だけど、アメリカなどで買ったものを日本で使うのは合法ではないんです。この技適が取れていないからですね。

    がじろう

    うん。

    Hossy

    現実問題として、違法だからといって罰則があるわけではないと思うんですけどね。いずれにしても、ちゃんと合法的に使うのであればカナダ版を買う。まあ、余談ですけど、僕はそうしています。

    ということで、シャッター音が鳴らないというのは、iPhoneよりも優れている。優れているって言い方もちょっと変ですが(笑)

    がじろう

    やり切ったと。

    Hossy

    AppleもSIMフリー版くらいはそうしてくれればいいのにと思うんですが、SIMフリー版でもシャッター音が鳴るんですよね、Appleは。カメラ周りは、とりあえずそんなところでしょうか。なので、ここは少し残念な結果になってしまったというところです。

    がじろう

    現実的なところでいくと、もう仕方ないですよね。

    Hossy

    これはもう本当にどうしようもない。

    指紋認証機能の搭載

    Hossy

    それで、ハードウェアの話だと、もう一つ指紋認証ですね。これはどうしても付けたかったんですよ。ただ、初代のWindows 10 Mobileは、OSの制限で指紋認証が使えなかったんですね。Androidなら使えるということだったので搭載しようと。一口に指紋認証と言っても、中国に行くと本当にたくさんの種類があるんですよ。その指紋認証センサー自体が。

    がじろう

    へぇ。

    Hossy

    さっきのカメラも、実はたくさんあるんですよ。ただ、やっぱりブランド力がありつつ、さっきの話でソニーにしましたけど。

    それから、指紋認証についても、我々には今までまったく知見がなかったので、何が良いのかが全然わからなかったんです。それで、海外の展示会に行って、指紋認証のメーカーをいろいろ回って、最終的に決めるのですが、まず一つ大きな課題として、指紋認証の精度がありました。

    やっぱり、指紋認証と言っても、指紋で認証できなかったら困るじゃないですか。ここをどうやって測って、製品として評価するのがいいのかが、全然わからなかったんです。

    がじろう

    うん、確かに。

    Hossy

    いろんなメーカーがあって、「うちのがいいですよ」って言うんですけど、どれを選んだらいいのかが本当にわからなくて、いろいろ苦労しましたね。

    今思い返すと、特に大変だったなと思うことの一つは、これはデザインの話になるんですけど、NuAns NEOの指紋認証の位置です。本当はど真ん中に置きたかったのに、技術的な制約でど真ん中には置けない、みたいな話があったんですよ。

    がじろう

    ほぉ。

    Hossy

    細かい話をすると、指紋認証って、iPhoneでも以前のSEにはありましたよね。今は指紋認証のラインナップがなくなりましたけど。あれって、ど真ん中にあったんです。

    がじろう

    ど真ん中ですね。

    Hossy

    基本的に、右手で使っても左手で使っても使いやすいじゃないですか。同じ方向なんで。

    がじろう

    確かに。

    Hossy

    でも、世の中で一般的に売られている指紋センサーの厚みを考えると、我々のコネクターは少し特殊なんです。一つ前に話しておくべきだったのですが、USB Type-Cコネクター自体は初代と同じですが、防水仕様のコネクターに変更しました。

    がじろう

    はい。

    Hossy

    そうすると、普通のものよりも防水性を持たせるために、周りが分厚くなるんですよね。これがなかなか難しくて、そのためにセンサーを置いてコネクターを置こうとすると、置けなくなる。つまり、厚みの積み重ねでいくと、コネクターの真上にセンサーが来るはずじゃないですか。だけど、それができない。「センサーの位置をずらさなきゃいけない」と言われて、「絶対嫌だ」と抵抗しましたね。

    このせめぎ合いをかなりして、結果、センターには来るようにはなったんですけど、僕の中では上下の位置があまり納得いってなかったんですよ。

    がじろう

    少し上とかに。

    Hossy

    だけれども、これはもうしょうがないと思ってやったんです。それと、すごく細かい話なんですけど、指紋認証をする際に、Appleも昔のホームボタンのiPhoneって、ボタン式だったんですよ。

    がじろう

    はい。

    Hossy

    今は、というか、SEはボタンではないんですよね。あれはただのセンサーなんですよ。ぐっと押した感覚で動作しているように感じるかもしれませんが、実際はボタンではありません。そして、このNuAns NEOのセンサーも、ボタンではないんです。ただ難しいのは、普通のiPhoneのセンサーを使っていた頃からすると、指紋認証のエリアに指を置いたら、それで指紋が解除されて起動させたいと思うじゃないですか。

    がじろう

    はい。

    Hossy

    だけど、普通はそれができないんですよね。「普通はできない」って、言い方は悪いかもしれないけど、僕は最初に「できない」って言われちゃったんです。

    がじろう

    はい。

    Hossy

    なぜかと言うと、それを実現するためには指紋センサーをずっと待機させておく必要があります。だから、電源ボタンを一回押して起動させてから、指紋センサーに手を置くとロックが解除できる、という話があって。「それは絶対に嫌だ」ということで、待機する電力を調整しながら、この指紋認証を実装したんですね。僕が思っていたよりも、もう少し上にしたかったんですが、結構下になっちゃったんですけどね。

    がじろう

    ふ〜ん。

    Hossy

    いずれにせよ、結果としては指紋解除の能力が一応あって、指紋センサーから起動もできました。他のメーカーはやってなかったと思うんですけど、指紋センサーをダブルタップすると機能が使えるといったことも、取り入れることができましたね。

    がじろう

    結構Hossyさんってこだわりは強い方じゃないですか。

    Hossy

    はい。

    がじろう

    他の人より。ただ、ビジネス上の経営判断も必要になってきたときに、これって妥協するか、しないかって、金額なのか時間なのか、一番重視するのは何になるんですか?

    Hossy

    一番か。一番は難しいですね。さっきのカメラの話で言えば、やはり時間とお金でしょう。時間もかけられないし、お金もかけられない、というような状況です。トップメーカーは莫大なお金を投じて、相当の時間をかけて各社作ってきているわけです。そこへいきなり追いつく、というのは現実的ではないよね、というところがあります。

    指紋センサーの話では、金額的な問題はあまりなかったのですが、先ほどお話ししたように場所の制約があって、少し妥協した部分はありました。

    がじろう

    これ、結構大事な気がしているんですよ。こだわりがまったくないと魅力的な商品にはならないし、逆にこだわりが強すぎると職人みたいになっちゃって、全然流通できないような価格になってしまう。その辺のバランス感覚って、すごく重要なんじゃないかなって思うんです。

    Hossy

    そうですね。できないことは仕方がないなという思いはあるんですが、絶対ダメなところにはいかないにしても、ある程度のところまでは行ったかなと思います。

    がじろう

    及第点ですね。

    ディスプレイと保護ガラスの高品質化

    Hossy

    あと、ハードウェアでもう一つだけ。ハードウェアについて、今回まとめて話そうと思いますが、もう一つがディスプレイですね。

    がじろう

    はい。

    Hossy

    これも初代の時は、スマートフォンを作ること自体が大変だったので、細部にまでこだわるのが難しかったんです。「じゃあ、これの方がいい」とか、「このメーカーのこの部品を使いたい」といった希望が叶わなかったんですね。先ほどのカメラもそうですし、指紋センサーはもともと搭載できないと決まっていたのでありませんでした。カメラで言うと、先ほどのようにソニーのものにしたり。ディスプレイももう少し良いものにしたかったという思いがあったんです。

    それで、第2世代ではシャープの5.2インチのフルHDを最終的に採用しました。初代はフルHDではなかったんです。でも、第2世代はAndroidですし、動画なども見ることを考えて、フルHDにしたいと思っていました。シャープのものを使えるなら使いたいという気持ちがあり、シャープとジャパンディスプレイ、ここまでいろいろお話ししてきたので分かっていただけると思うんですが、基本的には日本のメーカーを使いたいと考えています。

    がじろう

    うん。

    Hossy

    シャープの液晶を使いたいという希望がありました。ただ、ソニーの時と同じで、どう購入したらいいのか分からないという状況でした。中国経由でやると納期がすごく長くなる、という話があったんです。シャープについては、さすがに人づてのルートはなかったんですが、テレビ、確かワールドビジネスサテライトを見ていて。

    がじろう

    ほう。

    Hossy

    シャープの中国の営業担当の方が、中国のスマホ会社を巡って苦労されているという話を、特集か何かで見たんです。それで、大手ディスプレイメーカーと違って、「うちは小ロットでも対応できるのが強みです」みたいなことを言っていたんです。「これはじゃあうちもいけるんじゃないか」と思って、シャープに「テレビを見たんですけど」って連絡しました。

    香港か、中国の深圳に当時オフィスがあったんでしょうね。ミーティングさせてもらって、こういう仕様でやりたいという話をいろいろしていたんです。それで、ちょうどこれは本人たちは言ってなかったんですが、後から気づいて、「絶対にそうだ」と思ったことがあります。

    がじろう

    うん。

    Hossy

    彼らが僕らの仕様にほぼ合致した液晶を用意できると思いますって言ってきたんです。もちろん「いいじゃん」ってなりましたね。しかも、「ものはすぐあります」と。僕らがものすごく売れたとしても、まあ数万台程度でしょう。「そのくらいの数ならありますし、すぐ用意できます」とのことでした。ただ、その代わり、内部配線の仕様などのカスタマイズはできません。

    がじろう

    うん。

    Hossy

    普通、携帯やスマホの設計によって、ディスプレイと本体の基板を繋ぐ場所はいろいろ違います。そのため、ケーブルは基本的にディスプレイが同じでもカスタムが必要になるんですが、そのカスタムはできません。その代わり、「小ロットで、しかもすぐに供給しますよ」と言ってくれて。しかも、価格もそんなに悪くなく、良心的な価格だったんです。「これはもうやるしかない」と思って採用したんですけど、後から分かったことがありましてね。

    リアル経営だから言ってもいいと思うんですけど、別にぼやかしても誰かに何か言われるわけでもないですし。これはシャープから言われたわけではないんですが、僕らが疑っているというか、確信している話なんですが。

    がじろう

    はい。

    Hossy

    中国にXiaomiというスマートフォンメーカーがありますね。有名だと思いますが、こちらの機種と仕様がまったく同じなんです。おそらく、発注数が減らされたか、一部キャンセルされたか、何かそういう事情でうちに回ってきたんじゃないかというのがあって、たまたまそれに乗れたというわけです。僕には全然嫌な話ではありませんでした。

    がじろう

    そうですね。

    Hossy

    たまたまそういうことになって。Xiaomiだって、一応世界でも今やスマホメーカーとして3位か4位ですしね。当時はそこまでじゃなかったかもしれないですけど、そこのスマホと同じものを使うのは嫌ではなかったんですけど。いずれにしても、供給してもらって。

    がじろう

    逆にいうとタイミング的には良かった。

    Hossy

    そうなんですよ。だからこれも、テレビを見て連絡しなければ実現しなかったので、どういうご縁で繋がってくるんだろう、というのはありますね。

    それに加えて、AGCという日本を代表する、昔は旭硝子と言っていたガラスメーカーのDragontrail Proを使わせてもらうことになりました。当時、僕らトリニティはDragontrailという保護ガラスを使っていましたが、このDragontrail Proは本体用のガラスなので、外から貼る保護ガラスとしては使えないものなんです。でも、これを使わせてもらったおかげで、シャープの液晶とAGCのガラスという、かなりいい仕様でディスプレイとガラスを作ることができたんです。

    がじろう

    そこは、かなり満足いく感じですね。

    Hossy

    そうですね。ただ、裏話でちょっとだけ言うと、製造は超大変でした。

    がじろう

    どう大変だったんですか? 

    Hossy

    あのね、これもさっきの「疑っている」という話に近いんですけど、シャープの液晶の不良率が高いという問題がありました。この不良かどうかを見極める仕組みも大変でしたし、シャープに不良かどうかを認めてもらうのも難しかったんです。最終的には出荷時には良いものになったので良かったんですけど、まあ大変ではありました。

    がじろう

    確かに、これまで自分が作ったことないものを検品するのもすごく大変ですよね。

    Hossy

    そう。検品の基準作りとか相当大変なんですよ。

    がじろう

    まず、どの項目を見るかとか、一つ一つ確認していかないとだめですよね。

    Hossy

    そう。普通の会社っていうのは、品質管理とかの部門の人がすごく細かい仕様やチェックリストを作って進めています。僕らはそういうのがないので、工場に「普段どうやってるんですか?」と聞いて、「普段使っているチェックリストを見せてください」とお願いしました。それを見せてもらったものに、ちょっと足したり引いたりしながら作る感じですね。

    今だったらAIに作ってもらうこともできたと思いますが、当時はそういうのがなかったんです。

    がじろう

    なるほど。

    Hossy

    というわけで、いろいろと話そうと思っていたんですが、これだけで時間がなくなってしまいました。今回は、カメラと液晶とガラスと指紋認証という主要なハードウェアの部分についてお話しさせていただきました。ソニーとシャープとAGCという形で、かなり日本の誇れるものができたんじゃないかなと思っています。ということで、また来週も聞いていただけたら嬉しいです。

    がじろう

    ちなみに来週はどんな話が聞けるんでしょうか? 

    Hossy

    来週は、一つのテーマに絞るというよりは、今回も冒頭で少し触れたように、ハードウェアの話から始めて、いくつか小話を盛り込んでいきたいと思っています。

    がじろう

    了解です。

    Hossy

    ではまた来週もよろしくお願いします。

    がじろう

    よろしくお願いします。

    エンディング

    Hossy

    リアル経営|企業経営の成功と失敗。等身大で語る台本なき社長のリアル」

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    がじろう

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    Hossy

    ここまでの相手は、Hossyこと星川哲視と

    がじろう

    がじろうでした。

    Hossy

    それではまた来週、お耳にかかりましょう。

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