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一般的には色々な定義があると思いますが、私にとってのスマートフォンはiPhoneからスタートしています。Appleは当初スマートフォンではなくてiPhoneと言っていましたが、大きなカテゴリーとしてはiPhoneもスマートフォンのくくりになると思います。
そんなiPhoneを初めて触ったのは2007年6月でした。日本で発売されなかったiPhone 2G(3G対応ではなかった)ですが、アメリカに飛んでApple Storeに並んで手に入れたのです。
当時はiPodの延長線上で、電話とiPodが合体したものだという説明でした。まだアプリではなくて、ウェブサービスだけで機能を提供するような仕組みで、それでも無限の可能性があると感じました。
そこからもうすぐ20年。iPhoneの20周年モデルという話も聞こえてきますが、それでも今の延長線上から大きく変わることはなさそうに思います。しかし、いつかどこかで突如まったく新しいスマートフォンの置き代わりとなるデバイスが生まれてくるのだと思っています。その候補の一つとして、以前から気になっているデバイスがあります。
これだけの年月が経ち、テクノロジーが加速度的に進化していっている訳ですから、私たちのライフスタイルの中心であるスマートフォンのあり方も進化していくはずです。でも実際には、スマートフォンは視覚と指先という人間の限られた感覚に依存したまま、少しずつ形を変え、カメラを増やし、AIを搭載したりして順当に進化はしているものの、革命的には変わっていません。

そんな期待にも似た停滞感を吹き飛ばすように登場したのが、サム・アルトマンとジョナサン・アイブの異色タッグです。ChatGPTで世界を驚かせたAI業界の異端児と、iPhoneを美しく作り上げた元Appleのインダストリアルデザイナー。このふたりが「次のデバイス」を作るという話は未来を感じさせてくれました。
ここ数年の生成AIブームによって、私たちは「話しかければ理解してくれ、自然に返信もしてもらえる」ことを当たり前のように使えるようになりました。その結果、音声こそが次のインターフェースだ、という空気が一気に広がったように思います。

ChatGPTをはじめとする生成AIは、テキストを打てば即座に流暢な言葉で返してくれるし、音声でやり取りもできるようになってきました。だからと言って、指先で操作することを音声入力で、目で見ることを音声フィードバックで代替できるかといえばそうでもありません。
最近流行っているワイヤレスイヤフォンなどで音声で入力して、音声でフィードバックを受けるというのは、簡単なやり取りでは可能なものの、それだけをメインのインターフェースとするのは現時点では無理があります。私も音声入力自体の精度は上がっていると思っていて、ちょこちょこと使います。ブログ記事の下書きのようなものには使うことができます。

ただ、問題点が2つあります。
それはたとえばオフィスや通勤電車の中。はたまた家族がテレビを見ているリビングなど。音声フィードバックの方はイヤフォンでなんとかなると思いますが、音声入力の方は周りに人がいる状態で重要な仕事の情報入力やパーソナルなやり取りをすることはできません。
そして、もう一つは目で見るということを現時点では止めていないのです。つまり、音声入力をしているのですが、それを目で見て確認してから相手に送っています。特に日本語の場合には同音異義語が多くあり、いまだに日本語入力での漢字かな変換は思った通りにいきません。そうすると、本当に音声だけの入出力では成り立たない可能性が高いのです。
ここで一度立ち止まって、人間がどんな感覚器官でデジタル機器と向き合っているのかを見直してみます。
人間にとっての入力は目と耳、出力は声や指、視線、ジェスチャーあたりでしょうか。触覚や嗅覚、味覚などの感覚は少なくとも日常的なインターフェースとしては向いていません。視線やジェスチャーでは言語を伝達するには無理があると思います。つまり私たちは、目と耳で世界を受け取り、手と口で返している。それが情報の基本的な往復路になっているんだと思います。
それを根本的に見直さない限り、ディスプレイを見て、指で操作するという今のスマートフォンからは逃れられません。
そんな中で浮かび上がってきたのが、前述の2人のプロジェクトで、Gumdropというコードネームのデバイスです。どうやらペン型で、AIが内蔵されていて、画面はなし。話しかければ返してくれて、書けば理解してくれる。しかも体に付けるようなウェアラブルではなく、ポケットに入れて持ち歩くような存在だというような話です。
「なぜペンなのか?」という問いには、人々が長い間自然に入力デバイスとして使用してきたから、ということのようです。Humane AI Pinのように、胸元のバッジに話しかける行為は、前述のように部屋で一人でいる分には成り立ちますが、いつも使うインターフェースとなるわけにはいきません。でもペンなら、どこにいても自然に取り出せるというわけです。会議中でもカフェでも、ペンで書いているのであれば、誰にも奇異に思われないし、聞かれる可能性も低くなります。

ただ、私はこれはApple Pencilのような「ツール」としては成り立つものの、メインのデバイスにはなり得ないと思います。テキストを入力する方法としては、これからの時代にメインのやり方としては、どうしても古い方法に感じてしまうからです。たとえばペンで文字を書くよりも、タイピングの方が圧倒的に早いし、早さだけならば音声入力のほうが早いです。それに、どのように人間にフィードバックをしてくるのかまったくわかりません。書いたものがどのように認識されているのか、それを編集することができるのかできないのかもわからないのでは、入力デバイスとしては成りたたないと思うと思うわけです。
さらに気になるのは、これがウェアラブルではないという点です。つまり、常に身につけておくタイプではなく、あくまで「持ち歩く」デバイスになるということのようですが、それだと日常的に使うものではなくなります。
スマートフォンがここまで生活に根付いたのは、常に体の近くにあったからです。バッグにしまっている人もいるとは思いますが、私含めて周りの人たちはポケットなり、ショルダーストラップで常にすぐに取り出せる状態にしているはずです。

でも、Gumdrop(仮)はポケットに入れられるのかどうか。そんなペンのようなサイズで各種センサーとエッジAIが動作して、バッテリーがすぐになくなってしまわないのか。サイズが大きいとしたら、バッグに入れるようになってしまう。
そして、今の情報だけだと、フィードバックがないので、スマートフォンと一緒に使うもののように思えるのです。そんな存在が「相棒」になれるのかどうか、これは設計思想としても、マーケティングとしても難しいチャレンジだと思います。
ジョナサン・アイブは今回、「Calm Technology」というキーワードを前面に押し出しています。つまり、ユーザーの注意をかき乱すのではなく、そっと寄り添うような存在としてのテクノロジーのようです。これは彼がApple Watchで一貫して語ってきた、「テクノロジーは主張するべきではなく、必要なときだけ静かに役に立つべきだ」という思想の延長線上にあるものだと思います。「ガジェット」ではなく「空気のような存在」としてそばにいてほしい、という哲学です。
スクリーンを見せず、通知を鳴らさず、それでも必要なときに必要な情報だけを出すということが根底にあるようですが、ただ、それをするにはウェアラブルである必要があるように思いますし、ペン型のデバイスだとユーザーにフィードバックをどのようにするのかがわかりません。
私が将来的にはそうなると思っているのが、「脳に直接繋げて、インプットとアウトプットさせる」というものです。画面を見ることも、言葉を話すのも、指で操作するのも、耳で聞くのも不要になり、考えるだけで伝えられて、直接脳に情報が入り込んでくる。これはまさに、私が以前に経営していた会社と同じ名前のトリニティがヒロインとして出てくる映画「マトリクス」の世界です。

そんな未来を真面目に研究している人たちもいます。サム・アルトマンも超音波で脳の信号を読み取るスタートアップに出資しています。でも、倫理的な課題も山積みだし、医療リスクも今はまだ高いと言えます。しかし、これは時間が解決していく問題かなと思います。
今はまだ、その中間点にいて、中間点のデバイスが生まれてくるのか、今のままでいきなりマトリクスの世界に入るのかはわかりません。
ここまで考えてきたからこそ、私の中には期待と違和感が同時に存在しています。
このGumdropが「スマートフォンの代わり」になるのか? と問われれば、答えはNOとしか言いようがありません。少なくとも今の彼らはそれを「第3のデバイス」と呼んでいるようです。スマホとPCの間にある、もうひとつの道具という位置付けのようです。しかし、書くという行為がこれから一般的になっていくとはどうしても思えないのです。
いずれGumdropは正式に発表されるでしょう。2026年後半か2027年あたりになるのかもしれません。価格も、性能も、名前すら正式には決まっていない中で、良いか悪いかを判断するのは時期尚早ではあります。それでも、Appleの今を作ったジョナサン・アイブが、再び日常を変える何かをデザインしようとしている。ChatGPTでiPhoneの登場と同じくらいのインパクトを世の中に与えたサム・アルトマンが、そのデバイスと世界最大級のAIを繋げようとしている。この2人の試みには、たとえ結果がどうであれ、期待をするしかありません。
私は、こうした妄想まじりのプロジェクトがもっとあってもいいと思っています。完璧に完成された便利さよりも、ちょっと未完成なワクワクの方が欲しいからです。iPhoneは日々使うデバイスとして完成されていて素晴らしいと思いますが、来年、再来年にもおそらく同じ形で「着実な進化」を遂げていくことでしょう。
でも、いつかどこかでガラッと変わって欲しい。それを体験したいのです。
★
トリニティを経営している間も「いつかどこかでiPhoneやスマートフォンという形のデバイスではなくなる。その時にはケースも保護フィルムも不要になるかもしれない。けれども、新しいライフスタイルには必ず足りてないものがある、より便利にしてくれることを生み出せる余地がある。だから、それを先回りしていく必要がある」と話していました。今回の話では、そういうデバイスが生まれてくる訳ではなさそうなのですが、いつかどこかでそうなることは間違いありません。
本当はAppleにそれを出してほしいところなのですが。。。
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