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紅白歌合戦とテレビ視聴のあり方という記事を書いていたところで、テレビ視聴率というものについて、よく耳にしていたもののどんな調査が行なわれて、結果としてどんな意味の数値であるかということをもう少し知りたくなりました。

視聴率というテレビ業界における評価制度の仕組みと課題、これまで漠然と感じていたことや疑問について調べてみました。
視聴率という数字を、事実上の業界標準として調査・計測しているのが、1962年創業の株式会社ビデオリサーチ(略称:VR社)です。主に民放連(日本民間放送連盟)加盟局や広告代理店に加え、NHKを含む大手テレビ局が出資・利用している業界最大手の視聴率調査会社です。完全な第三者というよりも、テレビ局や広告業界が共同で出資している会社という位置づけになります。
株式会社ビデオリサーチ
テレビ業界において、VR社の視聴率データは通信簿のような意味を持ちます。私たちのような一般の視聴者ですらも、視聴率の高低によりその番組が人気であるかを測る指標にしていますし、テレビ局側からすると番組編成や打ち切りの判断はもちろん、CMの出稿単価、スポンサー契約、出演者の評価まで、この数字が動かしていると言っても過言ではありません。

では、この視聴率はどのような調査で算出されていて、どれくらいの信頼性があるものなのでしょうか。

たとえば、2025年の紅白歌合戦は、第1部(19:20〜20:55)が29.0%、第2部(21:00〜23:45)が32.7%でした(いずれも関東地区・世帯視聴率、VR社調べ)。ただ、実感として、周りで30%もの人が紅白歌合戦を本当に見ていたのかと考えると、少し違和感があります。ここで言う30%は「人」ではなく「世帯」である点も、直感とのズレを生む要因です。
降水確率が「その場所で雨が降る確率」ではなく、「同じような天気の日を何度も集めたとき、雨が降った日の割合」を表していると知ったのは、大人になってからでした。視聴率もそれと似ていて、直感とはズレやすい指標なのかもしれません。そう思い、改めて調べてみることにしました。
現在、視聴率は「ピープルメーター(PM)方式」という仕組みで測定されています。全国32地区に設置された約7,000世帯(例:関東地区は2,700世帯)に専用の測定機器が設置されており、そのデータを集計しています。

関東地区のサンプル数が突出して多いのは、単に人口が多いからという理由だけではありません。関東は日本最大の広告市場であり、キー局が集中する放送と広告の中心地です。そのため、広告取引や番組編成において最も精緻なデータが求められるエリアとなっており、統計誤差を極力小さくするために他地域よりも大規模なサンプルが割り当てられています。結果として、関東の視聴率は全国指標における事実上の基準として扱われることが多くなります。
実際に、サンプルとして選ばれた世帯では、テレビを視聴する際に用意されたリモコンを操作し、家族ひとりひとりに割り当てられたボタンを押すことで、「誰が」「いつ」「どの番組を」見たかが記録されます。

たとえば、父親と子どもが同時にテレビを見ていれば、それぞれが自分のボタンを押すことで、父と子の2人分が個人視聴として記録されます。一方で、世帯視聴率としては、その家庭はあくまで「1世帯が視聴した」として集計されます。このように、同じ視聴行動でも「世帯」と「個人」という2つの切り口で同時に統計が作られています。
この「ボタンを押す」仕組みを支えているのが、VR社独自の測定機器であるPM(ピープルメーター)です。PMはテレビの近くに設置される専用の小型機器で、家庭用に市販されているものではありません。
PMは、テレビに入力される放送信号を監視する形で接続されます。アンテナ線を分岐してPMを経由させる、もしくはHDMIなど映像信号ラインに介在させることで、「どの放送局が選局されているか」「いつチャンネルが切り替わったか」を自動的に検知します。画面を撮影したり、音声を録音したりすることはなく、取得しているのはあくまで放送信号の識別情報と時刻情報のみです。
番組名そのものはPMが直接認識しているわけではありません。「何時何分に、どの局が映っていたか」というログを、VR社側が保有する番組編成データベースと照合することで、「その時間帯に放送されていた番組名」を特定しています。

こうして記録された視聴ログは、原則として毎日自動的にVR社のサーバーへ送信されます。現在は暗号化された通信回線やモバイル回線を用いて送信されており、映像や音声、世帯の具体的な個人情報が外部に送られることはありません。PM方式は、見る人がボタンを押すというものすごくアナログな操作を含みつつも、統計的な代表性とプライバシー保護の両立を前提に設計された仕組みだと言えます。
さらに2015年10月からは「タイムシフト視聴率(録画再生を含む)」が導入され、その後、リアルタイム視聴と合わせた「総合視聴率」も段階的に発表されるようになりました。私もですが、録画して見るというライフスタイルはかなり一般的になっていると思うので、それが抜けていては本当の視聴率は測れないと思っていたので、この点は「ちゃんとやっている」のだなと思いました。
ただし、録画された番組は7日以内に再生されたものしかカウントされません。録画して1週間後に観たものは、視聴率上は「見ていない」に分類されてしまいます。ある一定の期間で区切らないといつまで経っても視聴率を算出できないので、これは仕方がないところなのかもしれません。
視聴率が上下することで、広告費は大きく変動するようです。特に民放においては、CM枠の販売価格が視聴率にほぼ比例して決まるため、数字は死活問題です。たとえば、ゴールデンタイムで1%視聴率が落ちれば、CM 1本あたり数百万円単位の損失になる場合もあるようです。これが故にテレビ番組を制作する側は視聴率を重要なKPIとしているわけです。売り物であるテレビ番組の価値がここで決まってしまうのですから、これはある程度仕方がないことです。

さらに、企業が狙う「ターゲット層」(例:20〜34歳女性など)にしっかり届いているかを測るために「F1層」や「M1層」といった区分けが用いられています。広告出稿側は、単なる視聴率ではなく「誰が見ているか」にこだわっており、そこでもビデオリサーチ社の細分化データが重宝されます。一般には世帯視聴率が使われ、実際に広告代理店やスポンサーなどが重視するのは個人視聴率です。これは、世帯の誰が見たかが特定できないと、番組の真の視聴者が見えずに広告効果を測ることができないからです。
視聴率調査は、統計学的に設計された無作為抽出にもとづくサンプル調査です。全体では約7,000世帯、特に重要な関東地区では2,700世帯が、日本全体のテレビ視聴を代表していると仮定して推計されます。直感的には「日本中でこれだけテレビがあるのに、7,000世帯だけで本当に足りるのか」と感じるかもしれません。
しかし統計学では、母集団の規模が非常に大きい場合、必要なサンプル数は人口の大きさに比例して増えていくわけではありません。たとえば、日本の人口が1億人でも、10万人でも、「割合」を推定する目的であれば、数千件の無作為サンプルがあれば十分な精度を確保できることが知られています。

視聴率調査も同じで、関東地区2,700世帯というサンプル数があれば、世帯視聴率30%前後の番組に対して、理論上の誤差はおおよそ1〜2%程度に収まります。VR社も公式資料の中で、このサンプル規模によって広告取引や番組編成に耐えうる精度が確保されていると説明しています。

重要なのは「数が少ないか多いか」ではなく、「無作為に選ばれているか」「母集団の構成をきちんと再現しているか」という点です。VR社は住民基本台帳を基にした無作為抽出と、世帯構成や年齢分布を母集団に合わせる調整を行なうことで、限られたサンプル数でも日本全体の傾向を推定できるよう設計しています。
ピープルメーターでは、モニター世帯の人はテレビを見るたびに「自分が見ている」とボタンを押す必要があります。つまり、モニター世帯は「自分が調査対象である」という意識を常に持って生活しています。
この状態では、人は無意識のうちに「良い視聴者」になろうとする傾向があるとされています。たとえば、下品なバラエティを避けたり、深夜番組を見ないようにするとか、NHKやニュース番組を選ぶなど。こうした行動の偏りを「ホーソン効果」と呼びます。
ただ、PMを導入してからしばらくするとその意識も薄れ、機器の存在が一般化し、徐々に自然な視聴習慣に戻ると説明されています(家具化というらしいです)。

また、2年ごとにサンプルは入れ替えられており、特定の家庭の偏りが長期間影響することは抑制されています。このサンプルの入れ替えはとても重要な仕組みです。それは、長い間モニター世帯が同じだとどんどん高齢化していくからです。そうするとモニターの世代が高齢化していくことになります。実際には日本はすでに超高齢社会に突入しており、テレビを多く視聴する層も自然と高齢者が多くなっていっているので、実態に近いような気もしますが、正しく母集団を形成することが何より重要なのです。
VR社は、国勢調査などの公的統計を基準とした母集団(全国の世帯構成)をもとに、年齢・性別・世帯人数・子どもの有無といった属性の分布が実際の日本社会とできるだけ一致するよう、モニター世帯の構成を調整していると公表しています。単に無作為に集めるだけではなく、結果として「高齢者ばかり」「単身世帯ばかり」といった偏りが強く出ないよう、統計設計の段階でバランスを取っている、という位置づけです。
そこを補完して、2年ごとにモニター世帯を順次入れ替えていくことで偏りすぎないようにしているということです。
視聴率操作事件と、その後の変化
2003年、日本テレビのプロデューサーがモニター世帯に不正な視聴依頼をした事件が発覚しました。この事件をきっかけに、ビデオリサーチ社はモニター世帯の匿名性を徹底し、外部から特定されないような管理体制を強化しました。
現在では、業界関係者がモニターに選ばれた場合は除外されるルールや、長期にわたって視聴ボタンを押さなかった家庭は調査対象から外れるといったガイドラインも整備されています。
視聴率データはどのように収益になるのか
ここで一度、VR社がどのように収益を得ているのかにも触れておきたいと思います。視聴率はよく「広告費を動かす数字」と言われますが、VR社自身が広告費そのもので儲けているわけではありません。
VR社の主な収入源は、テレビ局や広告代理店、スポンサー企業に対して提供する視聴データそのものの利用料です。番組別・分単位の視聴率、年齢や性別で分けた個人視聴率、タイムシフト視聴率や総合視聴率など、意思決定に必要な詳細データを有料で提供しています。
テレビ局にとっては番組編成や改編判断の根拠として、広告代理店やスポンサーにとってはCM効果を説明するための共通言語として、VR社のデータは欠かせません。
視聴率が高くても低くてもVR社の収益が直接増減するわけではなく、むしろ数字の中立性と信頼性こそが最大の価値になります。もし特定の局や番組に有利な数字を出せば、その瞬間に業界全体から信頼を失ってしまう。だからこそ、VR社は視聴率そのものよりも、「測り方」と「継続性」に最大のコストをかけているのです。
私がいたスマートフォンアクセサリーの業界においても、POSデータを集計してデータ化しているBCNやGfKのような調査会社があり、そのデータを購入することで製品ごとの売れ行きや業界シェアなどのデータを利用して製品開発に繋げていました。
テレビがなくても見ている時代
今や若者の多くがテレビを持っていなかったり、持っていたとしても映像を映し出すモニターとして使用していることもあります。そして、YouTubeやNetflixをスマホで視聴する時代ですから、媒体としてのテレビ番組は相対的には小さくなってきているのは間違いありません。

なお、紅白歌合戦2025では、地上波の世帯視聴率が32.7%(第2部)でしたが、NHKプラスでの配信視聴は215万ユニークブラウザと、過去最高を記録したとのことです。いろいろ文句を言われつつも、NHKプラスはそれなりに視聴されているようです。
ちなみに、現時点ではこのネット経由での視聴は従来の視聴率には含まれません。テレビを見ていない人は「視聴していない」としてカウントされるため、実際には見られていても数字に表れない視聴が確実に増えているのは間違いありません。
株式会社ビデオリサーチ
こうした背景から、VR社は2024年から新たにTVerやYouTubeなども測定対象にした「トータル視聴率」の試験運用を開始したようです。これによって、テレビというデバイスに寄らない視聴率が計測されていき、正しく世の中を反映する調査になっていくことでしょう。
思った以上に視聴率調査はちゃんとしていて興味深かった
「視聴率」という言葉は、誰もが聞いたことがあるはずです。しかし、その裏側にある調査の仕組みや数字の意味はあんまりよくわかっていませんでした。今回、紅白歌合戦をきっかけに視聴率について掘り下げたことで、私自身の中にあったいくつかの疑問が解決しました。
なんとなく、視聴率なんていまだに信奉するのはおかしいんじゃないか。現在の視聴状況からすればあまり意味がなくなっているんじゃないかと思っていました。調べれば調べるほど、ちゃんと工夫をしているなと感じました。
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悪い癖で調べ始めると長くなってしまっていき、それをうまく伝えたいという思いから書き直したりすることで、今回も記事を書くのに時間をかけすぎてしまいました。ただ、思い込みだったところからちゃんと調べて理解できたのは有意義だったと思います。
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