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星川哲視(Hossy)の個人サイト Hossy.org は、これまでの起業・経営・卒業など、さまざまな経験からの情報をブログ記事やPodcastなどさまざまな活動を通じてアウトプットするサイトです。

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Episode 26|「ブランドストーリーのリアル|NuAns NEO編」【Part 4】独自の世界観と販売戦略。

【エピソード概要】

独自の世界観で生まれた「NuAns NEO」の次なる課題は販売戦略。

とある家電量販店との交渉は、一度は取り扱いを断念するという異例の事態へ。最終的に希望の条件を勝ち取った裏側を語る。

また、家電量販店以外にLOFTや東急ハンズといった雑貨店での展開、細部にわたるパッケージや付属品へのこだわり、そして海外展開を目指したクラウドファンディングの顛末まで、そのリアルな軌跡を描く。

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    Topic

    オープニング

    Hossy

    リアル経営|企業経営の成功と失敗、等身大で語る台本なき社長のリアル」

    この番組は、私、Hossyこと星川哲視が自らの体験をもとに、経営やその舞台裏などをリアルに語っていきます。

    リアル経営は、毎週金曜日朝6時に配信しています。

    Hossy

    おはようございます。自由人のHossyこと星川哲視です。

    がじろう

    おはようございます。STRKのがじろうです。

    Hossy

    いやぁ、やっぱりさすがに主人公でもあるNuAnsNEO。デジタルライフの中心であるスマートフォンを作ったということもあり、話したいことがたくさんありすぎますね。

    がじろう

    そうですね。

    Hossy

    長くなってしまうんですけれども、しょうがない。これはもう心して聞いてください。

    がじろう

    本当に、1回目でも話しましたけど、スマホを作った人って、いないじゃないですか。そういう人の話を聞けるって、なかなかないことですよね。

    Hossy

    そうですね。本当に前も言いましたけれども、そういう意味では、スマホを作った人で思いつくのは、僕はAppleのスティーブ・ジョブズしかいないので、スティーブ・ジョブズと同じということですかね。

    がじろう

    そうですね。経験としては。

    Hossy

    スマホを作ったという意味ではね。

    がじろう

    じゃあ、スティーブ・ジョブズがこうやって話をしてくれるのかっていう。

    Hossy

    そう、「あの時大変だったんだよ」みたいなね。

    がじろう

    (笑) 絶対しなさそう。

    Hossy

    実際にiPhoneが発表された時、Appleの発表会がサンフランシスコであったのですが、僕は当時、アクセサリーの海外展開のためにその展示会に参加していたんですよ。

    がじろう

    うん。

    Hossy

    展示会の準備してる時にもAppleのブースだけ黒幕がかけられていて、外から見えないようになっているんですよ。実際にiPhone発表して。そうすると、黒幕がこうバーンとどかされて見えるようになって、我々も見に行くんですけれども、たぶんあの時実際は動かなかったんじゃないかな。画面に絵を出してるぐらいの感じで、円柱のガラスケースの中に入っていて、絶対触れないという感じになってたんですよね。

    がじろう

    うん。

    Hossy

    それで、ジョブズがプレゼンした時も、僕が前回ちょっとお話ししたような感じで、たぶんちゃんと動いてなかったので、「こういう風に触ると止まっちゃうんで、こういう風に触ってください」みたいなことが言われていたらしいですね。

    がじろう

    はい。

    Hossy

    それが自信満々に「最高でしょ」みたいなことで発表できたのは、あれはあれで本当にすごいことだなと思いますね。

    がじろう

    そうっすね。

    Hossy

    本当に綱渡りと言っても過言じゃないぐらいの、すぐクラッシュするような状態でプレゼンしていたらしいですからね。本当のことは分からないですけれども、という話でしたね。

    がじろう

    へぇ。

    Hossy

    僕らも同じように、前日の夕方に初めて起動したので、ここらへんもジョブズと一緒ということでいいですか?

    がじろう

    そうですね、同等。

    Hossy

    はい。ではこれからは、「何をしたんですか?」と聞かれたら、「ジョブズと似たような仕事をしていました。」と言っていいですかね。

    がじろう

    名刺にも「ほぼジョブス」って書いておいた方がいいんじゃないですか?

    Hossy

    いや、これは叩かれそうですね。

    がじろう

    (笑) 調子に乗り過ぎました。

    販売店への展開構想

    Hossy

    それは冗談だとして、前回は販売するというところまでには辿り着きませんでした。発表会を開催したところ、おかげさまで多くのメディアに取り上げていただきました。ネットはもちろん、当時はまだ紙媒体も多かったので、そういったところにもたくさん紹介してもらって。

    やっぱり面白いですよね。メディアとしては、日本の埼玉にある従業員20人以下の中小企業が、中国製のスマートフォンをそのまま持ってきたのではなく、コンセプトを掲げてゼロから作り上げ、しかもそれがすごくかっこいい「ものづくり」をしたとなると、メディアとしても取り上げがいがありますよね。

    がじろう

    確かに。

    Hossy

    もちろん取材していただいた方にはいろいろ触ってもらったりというのはあるんですけれども、実際、一般の消費者が買うときには、触感がこのNuAns NEOの一つのキーワードになっているわけですから、やっぱりお店でも触ってもらって、それで納得して購入してもらうとか、カバーの種類を選んでもらうみたいなことはやらないといけないなと思っていたんですよね。

    がじろう

    うん。

    Hossy

    なのでやはりリアルな店舗でちゃんと展示したいなというところがありましたし、スマートフォンなので、いわゆる家電量販店でも置きたいなというところがあったりしたので、お店で何かしらカバーを体験もできるような世界観というのをしっかり保った上で、ブランドとコンセプトっていうのが伝わるやり方っていうのをやりたいなと思っていました。

    がじろう

    うん。

    Hossy

    なのでTENTがデザインしてくれた什器というのがあって、「こういう風に見せたい」という要望がありました。そこで、以前NIPPON GLASSやドン・キホーテの仕事もしてくれたトリニティのエースセールスパーソンが、この什器の製作も手伝ってくれたんです。彼は本当にこの辺りのことにすごく共感してくれて、あらゆる形で良い見せ方をしようと協力してくれましたね。

    がじろう

    はい。

    家電量販店での展開と交渉

    Hossy

    まず家電量販店。家電量販店ではiPhoneが普通に売られている。他にはAndroidもあり、Windows 10 Mobileなんて誰も知らないくらいの状態でした。マイクロソフトは一応発表はしていましたが、一般の人は知らないというのが大前提です。

    がじろう

    うん。

    Hossy

    我々がいう家電量販店には2種類あります。一つは駅前にあるカメラ量販店で、たとえばヨドバシカメラやビックカメラのようなところです。もう一つは広域量販店で、ヤマダ電機、まぁヤマダ電機は一部駅前にもありますが、ケーズデンキ、エディオンのような店舗が地方にいろいろあります。

    がじろう

    はい。

    Hossy

    やっぱり全国津々浦々に展開するのは、さすがに無理があるなと。たとえば、鳥取の砂丘のそばにあるヤマダ電機にNuAns NEOがあっても、実際に売れるかというと、なかなか難しいんじゃないかなと思います。

    がじろう

    そうですね。確かに。

    Hossy

    なので、基本はヨドバシカメラ、ビックカメラみたいな、駅前にある 家電量販店に展開しようということで、商談に伺うわけですね。

    がじろう

    はい。

    Hossy

    もともとアクセサリー販売でのお付き合いがあったんですけれども、通常、スマートフォン本体とアクセサリーのバイヤーは別々の担当者が行なっています。ただ、カテゴリーとしては同じなので、そこに商談に行きました。

    がじろう

    うん。

    Hossy

    この辺もソフトバンクグループの流通が仲介してくれたので、商談自体は比較的スムーズに進められました。ただ、バイヤーたちも世の中のトレンドを追っているので、このNuAns NEOがすごく話題になるだろうということは、商談前からすでに認識していたんです。

    がじろう

    うん。

    Hossy

    今だから言える話。リアル経営なので、やっぱりリアルな話を一つしておくと、ヨドバシカメラってあるじゃないですか。

    がじろう

    はい。

    Hossy

    量販店ってポイントを付けて値引き相当にしてしまうんですよ。もちろん、お客さんからすると同じものを買うならポイントが付く方が良いんですが、我々は今回、家電量販店だけではなく、後でお話しするLOFTや東急ハンズ、雑貨店等でも展開したいと考えていました。ポイントって実質的には値引きと同じになってしまうんですよ。

    がじろう

    うん。

    Hossy

    先ほどお話ししたように、お客さんの立場からすると、たとえば1万円の商品に10%のポイントが付くとなると、頭の中では「実質9,000円」だと感じる方もいらっしゃいますよね。一方で、雑貨店で1万円の商品が1万円でポイントも付かないとなると、やはり量販店のほうが安いのかなと思ってしまうもので、なるべくポイントを付けたくないという気持ちが僕の中にはありました。

    がじろう

    はいはい。

    Hossy

    携帯電話って、やはりもともとの金額が高いですよね。たとえば10%で39,800円のものだと、3,980円もお得になってしまう。ポイントは確かに0にはできなかったんじゃないかな。Apple製品でも1%くらいは付いてた気がします。今だったらもう少し付くかもしれませんね。

    まず相手に「これは面白いぞ」と思わせてから価格の話をした時、我々のような、スマートフォンメーカーとしてはまったく無名中の無名みたいな会社が、ポイントを付けないでほしいという売り方を提案したんです。我々のような知名度の低いメーカーが、Appleのように「ポイント1%でお願いします」と頼むのは、先ほども言った通り、1%というのはかなり稀な対応なんですよね。だから「それはできません」と返ってくるわけです。何度かやり取りするうちに、「ああ、これは無理だな」と思いました。

    がじろう

    うん。

    Hossy

    それで、今、思えばなかなかだなと思うんですが、「じゃあ今回、御社での取り扱いは諦めます。」とお伝えしたんです。

    がじろう

    ほう。

    Hossy

    普通に考えると、ヨドバシカメラにスマートフォンのメーカーが新製品を持ってきて商談し、取り扱われるはずだったんですよ。しかし、ポイントの話で「それなら取り扱わなくて結構です」となるのは、本当にありえない話ですよね。

    がじろう

    うん、みんな扱って欲しいですからね。

    Hossy

    普通はそうですよね。ヨドバシカメラは、秋葉原や梅田に日本一の売上を誇る店舗があるように、販売力は本当に高いんです。ただ、僕らとしては、世界観や場所をきちんと確保させてもらった上で、いろいろな条件が合わないなら諦めるしかない、というところがありました。

    世界観に関して言うと、当時は携帯電話とアクセサリーを一緒に展示することはありませんでした。メーカーが純正でこれほどケース等のアクセサリーを出すということもなかったので珍しかったんです。Appleでさえ、アクセサリーは別の場所に置いていますよね。価格や分割払いの条件などがたくさん並ぶよりは、きちんとコーナーを作らせてもらって「こういう風に見せたい」という僕らの要望は、それ自体は受け入れてもらえていました。

    がじろう

    うん。

    Hossy

    Apple以外のメーカーは、きちんとした売り場を持っていなかったんですよ。それで、僕らはイメージ図やサンプルを持参して、このように展開したいという提案をしました。その結果、彼らも協力してくれるようになったんです。

    がじろう

    うんうん。

    Hossy

    それも普通はないことなんです。無名の弱小メーカーが「場所をください」「こういう展開をしたいです」「自分たちで用意した什器を置きたいです」というのは、基本的には認められないんですよ。ただ、製品の面白さと、きちんとプレゼンをした上で製品を理解してもらって、「面白いね」と思ってもらえたので、そこは実現できました。

    ですが、ポイント1%は無理です、という話でした。僕もなんだか、やんちゃだったのかもしれません。「では、仕方ないです。他社さんで頑張ってやります」という感じで商談を終えて帰ったんです。

    以前お話ししたソフトバンクグループの流通で販売していたので、ソフトバンクグループの人と一緒に商談をして、説明などは僕がすべてするのですが、商談が終わって帰り道くらいだったかな、ソフトバンクの上の人から電話がかかってきて、「星川さんどうしたんですか? 暴れたらしいじゃないですか」と言われました。いやいや、僕としては「暴れてはないですよ」と。「条件が合わなかったんです」という話で、その人も「取り扱いしなくていいというスマホメーカーはあり得ないですよ」みたいな反応でした。

    でも、「そうなんですけど、条件が合わないなら仕方なくないですか? と」いう話をその人としました。

    がじろう

    はいはいはい。

    Hossy

    条件というか、我々は基本的に商品を開発し、プレゼンを行い、バイヤーさんに「売れる」と判断してもらえたら、実際に店舗で販売するという流れで動いていました。そこからソフトバンクの方々にバトンタッチする形で、販売を進めていたんです。

    がじろう

    はい。

    Hossy

    結局、ソフトバンクの方が僕抜きでヨドバシカメラの人と話をしたんです。その上で、「あのメーカーはなに? うちで扱わないのは普通はないでしょう」というような話になったらしくて。これまでの商談相手だったアクセサリー担当者とは違う、事業部長のような上のレベルの方で、結論から言うと、その方が社内で本当に頑張ってくれたみたいで、最終的には1%でやってもらうことができました。

    がじろう

    その時に「この商品自体は10周年で記念でやるから」ということで、別に儲けなくてもいいって気持ちもあったと思うのですが、それをヨドバシさんに伝えたことで、既存の取引に何か影響があるのではないかという心配はありませんでしたか?

    Hossy

    いや、実はその時は何も考えていなかったんですよ。無鉄砲と言えばそうだったのかもしれません。ただ、ソフトバンクの上の人たちからすると、アクセサリーを担当するバイヤーよりも、携帯本体を担当するバイヤーの方が当時のレイヤーとしては上だったんです。

    先ほども言ったように、事業部長のような立場でしたから。だから、「あのメーカーのスマホもアクセサリーも全部やらない」ということもあり得る状況だったらしいです。

    がじろう

    へぇ。

    Hossy

    僕としてはそこまで深く考えていなかったんですが、「既存の取引の方も危ないですよ」と言われてしまって。でも、そう言われてもしょうがないし、商談も終わっちゃったし、言ってしまったことは取り消せません。

    実際、後になって事業部長の方は「このメーカーはこだわりや世界観がすごくしっかりしていて、どうしても合わないなら取引しないという選択肢は、これまでのメーカーの売り込みの商談ではあまりなかったことだ。でも、それが面白いじゃないか」と。

    がじろう

    逆にプラスに転じたんですね。

    Hossy

    そうですね。これは男気と言いますか、今のジェンダーの時代にはそぐわないかもしれませんが、もちろん男性の方だったんですが、その方が逆に「面白い」と興味を持ってくださって。その後は、アクセサリーのことも含めて、トリニティという会社の製品のこだわりなどをすごく理解してくださいました。その方が会社を辞められた後も交流があったくらい、本当にお世話になったんです。危なかったは危なかったらしいですけど。

    がじろう

    これ聞いている人が「じゃあ」って言って、同じようなことをしたりして(笑)

    Hossy

    いやいや、これは相手とその製品やいろんな状況が噛み合った上で、たまたまこの結果になったので、これを聞いた良い子は真似しない方がいいと思います。

    がじろう

    そうですね。

    Hossy

    僕はまったく責任を持てません。

    がじろう

    良く考えて行動してもらうように。

    Hossy

    これとは別に、家電量販店のノジマをご存知かと思いますが、そこにも商談に行きました。ノジマには駅前店はないのですが、「埼玉のメーカーはいいね」という話になり、埼玉の店舗で展開してもらえることになったんです。これはこれで面白い展開で、僕としてはそこまで期待していなかったのですが、何か面白いことになったなと感じましたね。

    雑貨店での展開とMVNO

    Hossy

    家電量販店以外でも、このNuAnsもそうだったし、NuAns NEOも含めてガジェットだったので、家電量販店というよりは、生活に馴染む雑貨としての一面も出したかったんです。通常のNuAnsラインナップもそうでしたが、セレクトショップ、雑貨店、大手だとLOFTとか東急ハンズとか、当時「アジト」という高級雑貨店とか、あとは蔦屋などでも展開してもらっていました。

    こちらは逆に条件もなかったですし、そもそもLOFTなどもそうですが、長い歴史の中でスマートフォンを売るのは初めてというところが、雑貨店ではほとんどだったんじゃないかと思います。

    がじろう

    へぇ。

    Hossy

    なので、雑貨店でスマートフォンを買うという展開ができたのはすごく面白かったなと思っています。

    がじろう

    「動かした」ってことですよね。

    Hossy

    そうそう。あとはスマートフォンなので、今でいうMVNO、当時からMVNOでしたが、通信を行なっていたU-mobileという会社がありました。U-NEXTのグループで今もやっているのかは、ちょっと僕も分からないですけれども。U-mobileは、NuAns NEOと自分たちで販売しているSIMをセットにして販売するというのをやってくれていました。

    NuAnsはスマートフォンなので、通信できないといけないですからね。直営店みたいなところでもやってもらったり、LOFTなどの店舗でもSIMとセットでU-mobileを一緒に展開していたんですよね。

    がじろう

    へぇ。

    パッケージデザインの追求

    Hossy

    あと、そうそうそう。今突然思い出してしまって、差し込むのは申し訳ないんですけれども、前回デザインのところで話しそびれてしまっていたので、ここでいきなり差し込みますね。店舗の展開にも若干関係していたので、パッケージについてです。

    がじろう

    はい。

    Hossy

    パッケージもデザインに凝っていて、ネットで画像を見てもらうのが一番伝わると思うのですが、NuAns NEO自体を上から見た楕円形と同じ形の、再生紙を使った紙の缶、「紙缶」と呼んでいましたけれども、それで作っています。

    がじろう

    はいはい。

    Hossy

    トイレットペーパーとか、サランラップの芯、あれのイメージです。

    がじろう

    固めの紙ですよね。

    Hossy

    そうそう。アレを巻いた形で、そこに上下にキャップを挟んで、これ自体のデザインもなかなかなかった。

    がじろう

    はい。

    Hossy

    携帯電話のパッケージというのは四角いというのが大前提だったと思うんですけれども、そこでNuAns NEOの形状に合わせた形でR(円)を使っていこうと。これが貯金箱になるんですね。実際フックがついていて掛けられるようになっているんです。そこに500円玉くらいの穴が開いていて、フックにかけられる紐が出ていました。それを取ると貯金箱になるということで、僕がそれ以降いろんな製品企画した時でも、パッケージをそのまま買った後にゴミにするんじゃなくて、使い続けられるという工夫をしていましたね。

    今、話しながらちょっとネット検索をしたんですけれども、トリニティのブログで洋平がNuAns NEOのパッケージに500円玉を毎日貯金して満タンになりましたという話を書いていて。

    がじろう

    へぇ!

    Hossy

    実際ブログによると65,000円、貯まって。

    がじろう

    本体より高くなると。

    Hossy

    僕らとしては、「次の製品を買うために、これで貯金にしてください」というような感じでやっていました。なので、そういうパッケージにも少しストーリーを加えたり、あとは付属品ですね。

    がじろう

    はい。

    付属品へのこだわりと差別化

    Hossy

    また思い出したので追加してお話しますが、付属品のケーブルにもこだわりがあったんです。本体はUSB Type-Cという両面どちら側でも使えるコネクターを、多分日本メーカーとして初めてスマートフォンに採用したのですが、スマートフォン側ではなく、充電器側にはUSB Type-Cがほとんどない時代でした。充電器としては四角いコネクターのType-Aが一般的だったんです。

    Type-AはMicro USBと同様に上下があります。これもわざと上下があるように作ってはいるのですが、Windowsなどでは最近までこの四角いコネクターのUSB-Aが付いていたと思います。充電器側は我々が作っていないので、そこをコントロールすることができませんでした。そのため、NuAns NEOに同梱されていたケーブルは、NuAns NEO側がUSB Type-Cで、充電器側がType-Aという四角いコネクターでした。

    先ほど言ったように上下があるのですが、少し特殊なやり方をして、同梱していたケーブルのType-Aの四角いコネクターは、上下どちら側にも挿せるようにしていました。

    がじろう

    へぇ。

    Hossy

    これは日本の会社が特許を持っている技術で、僕たちはライセンス料を払ってその技術を使わせてもらっていました。というのも、普段から僕はType-Aの四角いコネクターやmicro USBが嫌で、上下を間違えてイラッとすることあるよねと言っていたわけです。iPhoneのLightningはいいよねって話していましたが、Appleも逆側のコネクターはType-Aをずっと使っていましたよね。今でこそType-Cですが、以前はType-Aで、どちらに挿せばいいか分からない状態だったんです。

    自分で作る時には、これを何とか解消したいと思っていました。本当は両方ともType-Cがいいと思っていましたが、Type-Cで充電できることがないよねということで、「さすがに無理じゃないかな」と思ったので、Type-Aにした時に両方使える方法はないかと探していたら、ちょうど良いものが見つかりました。

    特許があるものは普通は使わない、となると思うのですが、僕らは「結果的にどちら側でも使えるType-Aというのは面白いよね」という思いもありました。そこで、ケーブルのコネクター部分のライセンスを購入し、1本あたりいくらという形で使用料をお支払いして使わせてもらったんです。

    がじろう

    なんでそこまでこだわるんですか? すごいっすよね。

    Hossy

    これはお金がかかるんですけれど、逆に差別化という点では、他のメーカーとは違うとなりますし、自分としてもすごく使いやすくなるということもありました。

    がじろう

    うん。

    Hossy

    あと、当時としては珍しかったのですが、ファブリック調のケーブルを採用していました。生地のような質感で。今、iPhoneを買うと充電ケーブルはファブリック調になっていると思いますが、当時はプラスチック、PVCだったのでしょうか、いわゆるツルツルのケーブルが一般的でした。しかし、その素材があまり好きではなかったので、僕らは質感を重視してファブリックのケーブルを選んだのです。

    がじろう

    Appleの先へいっているということですね。

    Hossy

    そうですね。その後Appleがファブリックにしているので、Appleよりも先にいくくらい、そこにはこだわりがありました。 パッケージや付属品も含めて、自分が「これがいい」と思う形に仕上げられたかなと思っています。

    がじろう

    何かよく商品開発で、自分をお客さんにして商品を作ったら、最低でも1個以上は売れるだろう、という発想があるじゃないですか。それをとことん追求している感じですね。本当にHossyさんが「もう嫌だ」と思うようなことを、すべて叶えていったという。

    Hossy

    そう、ブランドとか販売チャネルというのは、僕らは本当に弱かったところはあるんですけれども、自分がスマートフォンで嫌だな、ここがこうだったらなと思っていたところをすべて反映するということができたかなと思っています。

    がじろう

    へぇ。

    Hossy

    実際、iPhoneはパッケージや付属品の入れ方まで考え抜かれていて素晴らしいと思います。でも、iPhone以外の選択肢、たとえば当時のXperiaなんかは、製品自体は良くても、ケーブルが針金みたいなもので止められていたり、変なビニール袋に入って中で固定もされていなくてコロコロ動いたりするんです。それでは高級感もまったくなく、これではiPhoneには勝てないだろうと思っていました。

    だから、こういったパッケージや付属品の細部に至るまでこだわりを持つことが、ブランドとしてすごく重要なんじゃないかなと考えています。

    妥協点としてのカメラ性能

    がじろう

    ただ、前回、価格は同時に発表されたものより比較的安かったという話があったと思うんですが、これだけいろいろなことにこだわっていたら、コストがすごく高くなってしまうと思うんです。今だから言える妥協じゃないですけど、そこまでこだわらずにコストを優先した点というのはありますか?

    Hossy

    う〜ん。

    がじろう

    多分、何でもかんでもこだわりすぎてコスト高くなって売価高くなったらダメだし、そのバランスも必要なのかなって思うんですが。

    Hossy

    そうですね、コストはもちろん意識していました。ただ、ソニーやAppleもそうだと思いますが、もっとたくさんの人が関わっていますよね。変な話、給料が高い人たちが関わっているという意味では、その分コストも高くなっているのかなとも思います。僕らは比較的少ない人数で、軽くやっていたというところがあると思います。やっていることの割には、値段はそこまで高くなかったかなと思います。

    がじろう

    うん。

    Hossy

    今思いつく妥協点は、やっぱりカメラでしょうか。コストのこともあったとは思うんですが、カメラ自体の画質や良さをどうすれば高められるのか、その方法がまったく分からなかったんですよね。

    がじろう

    う〜ん。なるほど。

    Hossy

    技術という意味で、こう、どう画質を上げていくかというのが全然分からなかったですね。スマホで写真を撮るのは、大きな使い道の一つじゃないですか。

    がじろう

    昔はデジカメがありましたもんね。それがどんどんなくなっていった。

    Hossy

    だんだんデジカメからスマホに移行していく中で、日常を記録する手段として、スマホのカメラで撮影することが増えてきましたよね。でも、思ったようにはいかないものだと感じています。

    がじろう

    そもそもビジネス用の携帯として使われる予定でしたからね。

    Hossy

    これは妥協というよりも、本当にどうしていいかが分からなかったというところですかね。

    がじろう

    じゃあ、やり方が分かっていたら、やはり行なっていたということですか?

    Hossy

    実際、次の世代でこの点についてトライするんですが、相当な費用がかかります。本気で取り組むと、普通に億単位のお金が必要になることもあり、正直なところ、初代も2代目も、このNuAns NEOのカメラ画質に満足したという人は少ないのではないでしょうか。僕も正直、厳しいと感じていました。

    がじろう

    う〜ん。

    海外展開とクラウドファンディングの挑戦

    Hossy

    はい。ということで、発売までこぎつけたところで、お店での展開や細かなこだわりについてお話しさせていただきました。次は、海外展示会の話などをさせてもらおうと思っています。

    がじろう

    はい。

    Hossy

    海外展開については、もともとチャネルがあったというのもありますが、Simplism時代からやりたいと考えていましたし、NuAns NEOこそ日本のものづくりとして展開したいという思いがありました。そのため、発表して発売する頃にはCESやスペインの展示会に出展するなどして、世界展開を目指していました。

    正直なところ、展示会ではどこへ行っても「すごく評判がいい」と感じましたね。iPhoneがかっこいいと言われていた時代に、iPhoneとはまったく違う系統ではありましたが、僕は今でもかっこいいと思っています。細部のこだわりもコンセプトもすべて含めて、とても良かったと思っています。

    がじろう

    うん。

    Hossy

    「最高だ」という話もありつつ、軽い気持ちで出していたのですが、実際に販売するとなった時には、海外への展開がなかなかうまくいかないという問題がありました。

    がじろう

    うん。

    Hossy

    NuAns NEOを海外で展開する時、Simplismの時にも少しお話したと思うのですが、直接販売するか、代理店を通すかという選択肢があります。これだけの製品で代理店契約をして販売できるのかという点が一つ。

    それから、携帯電話はやはり特殊で、テクノロジーの回でも触れましたが、公共の電波を使うので、日本でも技適(技術基準適合証明)を取得して販売しなければなりません。このように、日本には日本の、海外には海外のルールがあるんです。

    がじろう

    う〜ん。

    Hossy

    これ、けっこう参入障壁があるんですよ。やっぱり海外では売っているけど、日本では売っていないスマートフォンメーカーとか、あとはメーカーの中でもこの機種は売っていない、みたいなケースがあって。こういうところで、各国に合わせてカスタマイズして販売するというのは、コストが見合わないんだと思います。

    がじろう

    うん。

    Hossy

    各国ごとにコストをかけて仕様を合わせるのは、実際なかなかできないことです。いろいろ話はあったのですが、展示会ではなかなか条件が合わず、結局、直接お客さんに届けられるという意味で、クラウドファンディングでやりました。

    がじろう

    ほうほう。

    Hossy

    向こうの仕様に合わせる形で、アンテナ設計などを少し変更する必要があるのですが、「この開発費をまかなえるならアメリカで販売しますよ」というような状況です。クラウドファンディングはお客さんが実際に買うことを約束し、クレジットカードなどで決済した上で、それが集まったら実行するものです。これは別の機会に詳しく話したいと思います。

    クラウドファンディングと言いつつ、初回オンライン通販をしているだけなのではないかというケースも最近は少なくありません。日本でもクラウドファンディングは、「こういうことをしたいけれど資金がないから、みんなの『欲しい』という気持ちとお金が集まったら実行しよう」というようなものだったのが元々ですよね。

    がじろう

    そうですよね

    Hossy

    だけど結局、クラウドファンディングって呼ばれていても、実際はクラウドファンディングじゃなくて。そのあたりは、たとえばMakuakeという最大手のところでも、もうクラウドファンディングって言わなくなっていますよね。

    がじろう

    ああ、そうですか。

    Hossy

    実際、クラウドファンディングではないことばかりですよね。すでに中国にあるものを日本に持ってきたような形とか。

    がじろう

    発売ありきの決まってるやつを。

    Hossy

    そうそう。そもそも「目標達成しなくても売るでしょう」とか「目標値10万円ってやっぱりおかしいよね。それじゃものづくりは実際はできないよね」という話があって。目標値は最初から低めに設定して、一度達成はするんです。達成して、「200%いきました、数100%いきました」みたいに、売れてますアピールをして販売することが多かったんです。

    でも、NuAns NEOのクラウドファンディングは、本当にアメリカ向けにアンテナ設計の開発費用を賄えるならやりますよ、という本当の意味の
    クラウドファンディングを行いました。

    がじろう

    ふ〜ん。

    Hossy

    それで、実際には1,400万円ほど集まったのですが、これだけ聞くと大きな金額に思えるかもしれません。しかし、アンテナ設計のやり直しや試験を通したりすると、実際には3,000万円から4,000万円くらいかかってしまうんです。そのため、1,400万円集まったとしても、費用が3,000万円ほどかかるとなると、「無理だな」という話になりまして。

    これは本当の意味でのクラウドファンディングだったので、残念ながらプロジェクトは目標未達成となり、諦めることになりました。

    がじろう

    う〜ん。

    Hossy

    海外展開はこれでできなかったというところで終わるわけですね。

    がじろう

    はい。

    Hossy

    ということで、発売までのいろいろなできごとや、ちょっとした裏話もお話ししました。そして、クラウドファンディングも海外では少しうまくいっていないというところで今回は終わりにします。

    次回は、NuAns NEO初代の最終回として、結果がどうだったのか、知っている人は知っていると思いますが、その結果の内側にはいろいろな事情があるので、次回、初代の結末についてお話しできればと思います。

    がじろう

    クライマックス。

    Hossy

    そう。クライマックスということで、来週もクライマックスをどうぞお聴きください。ありがとうございました。

    がじろう

    ありがとうございました。

    エンディング

    Hossy

    リアル経営|企業経営の成功と失敗。等身大で語る台本なき社長のリアル」

    概要欄にこの番組のWebサイトへのリンクを張っております。 感想、メッセージ、リクエストなどそちらからいただければ嬉しいです。

    がじろう

    毎週金曜朝6時配信です。ぜひフォローお願いします。

    Hossy

    ここまでの相手は、Hossyこと星川哲視と

    がじろう

    がじろうでした。

    Hossy

    それではまた来週、お耳にかかりましょう。 

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