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経営や趣味、時事などのブログ記事や、Podcastの発信を日々行なっています。ニュース登録をしていただければ、更新情報を配信していきますのでお気軽にご登録ください。(広告を配信することはありません)
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【エピソード概要】
「NuAns NEO」は、「温かみ」や「手触り」を追求し、日本メーカーの素材、常識を覆す天然木など、独自の素材と着せ替え可能な「ツートーン」コンセプトが誕生した。
高度なインモールド技術を駆使し、他にはない製品を開発。曲線を帯びたデザインゆえの苦労を乗り越えたストーリー。
マイクロソフトの発表会で大きな注目を集めた、その開発と発表の舞台裏には、様々なドラマが隠されている。
「Podcast:リアル経営」このエピソードに関するご意見・ご感想をぜひお寄せください。今後の配信の参考にさせていただきます。
リアル経営|企業経営の成功と失敗、等身大で語る台本なき社長のリアル」
この番組は、私、Hossyこと星川哲視が自らの体験をもとに、経営やその舞台裏などをリアルに語っていきます。
リアル経営は、毎週金曜日朝6時に配信しています。
おはようございます。自由人のHossyこと星川哲視です。
おはようございます。STRKのがじろうです。
はい。おはようございます。さて、ここまでNuAns NEOというですね、トリニティが作り上げたスマートフォンについて、第1回、第2回と来まして、開発やメンバーのお話をしてきました。
1回目は10周年の話もあって、その前段階もあったので少し長くなりましたが、Windows 10 Mobileという新しいOSに魅力を感じて、スマートフォンとコンピューターの融合ができて、新しい仕事寄りのイメージの中でもゲームチェンジする可能性があるのではないかと考えました。
さらに、マイクロソフトがスマートフォンを開発できるプログラムを提供してくれたので、これならスマートフォンを作ったことのないアクセサリーメーカーでも作れるのではないかという思いで開発をスタートしました。前回は特に、天才永山さんの功績が大きかったというお話ばかりでしたが、ここまでが前回までのお話です。
はい。
本当を言えばテクニカルなことってものすごくいっぱいあります。
はいはいはい。
そのあたりも、おいおいリクエストがあれば話していきたいのですが、たとえばフロントカメラの位置などですね。すごく細かいことかもしれませんが、結構揉めました。僕(とTENT)はシンメトリーの美しさが欲しかったので、「カメラはセンターに欲しい」という希望があったのですが、いろんな基板や事情があって、結局少しセンターからずれてしまって。ここは本当に悲しい気持ちでしたが、「製品としては仕方ないな」と。
こうした細かい点はたくさんあるのですが、今回はデザインについてお話しできればと思います。
よろしくお願いします。
やっぱりNuAns NEOということで、NuAnsというブランドの延長線上でスマートフォンを作ったんですけれども、前回からというか、最初からNuAns NEOという名前を言ってしまっていますが、名前の由来を言っておかないといけないですよね。
はい。名前の由来。
はい。以前少しお話ししたと思うのですが、名前にこだわりがあり、きちんと理由があって名前をつけたいという気持ちがありました。本当はトリニティを含め、名前シリーズとしてきちんと一回やることを大前提として、今回の流れでNuAns NEOになったので、NuAnsの部分を含めて少しだけお話ししたいと思います。
はい。
「トリニティ」という社名は、ある程度の人は知ってくれているかなと思っていますが、「マトリックス」という映画があって、この映画のヒロインにトリニティというかっこいい女性が出てくるんですよね。トリニティはキリスト教の用語で「三位一体」という意味があります。会社を3人で始めたこともあり、そこから三位一体のようなイメージを重ねました。
また、名前を考えていた時に、後付けでいろいろな理由が見つかったんです。僕は音楽からスタートしたこともあって、KORGというシンセサイザーを出しているメーカーがあってTRINITYというシンセサイザーがあったりとか、いろいろと繋がりを感じました。最終的には、Webサイトのドメインネームですね。「trinity.jp」というアドレスを、このままの形で取得できると分かったのが決め手となり、「これでいこう」と決めました。
ドメインが取得できたことで「トリニティ」になったという経緯がありますが、元々は映画『マトリックス』がきっかけでした。
はいはいはい。
それでまた別に話しますけれども、この映画を見たことがある人は多いと思いますが、20年以上前の作品です。このトリニティってマトリックスの映画の中で出てくるんですけど、ヒロインではあるものの、主人公ではありません。
はい。
主人公って誰ですか?
主人公の名前ですか?
そう、名前って、映画の中の名前ね。
はいはいはいはい。いや、僕このトリニティと付き合う前に3部すべて見たんですよ。もう一回見直して。
はい。
まったく覚えてないですね。
今、これの話をしてるんで(笑)
主人公は「NEO」っていうんですよ。
それでか。なるほど。
はい。英語でネイティブで呼ぶと「ニオ」のような感じですが、英語でいうとちょっとわかりにくいので、「NEO」なので、ネオというと誰もがわかるかな、というところで。
じゃあもう主人公が初めて来たってことですよね。この商品として。
そうなんですよ。それで今まではトリニティというのがいたんですけれども、最終的にここで主人公のNEOというのが出てくると。
じゃあもう社名より本当の主役がついに来ましたよ、ぐらいの気持ちなんですよね。
実際、スマートフォンアクセサリーを手掛けてきた上で、スマートフォンというのは本命中の本命というか、中心じゃないですか。
それはそうですね。
我々が「デジタルライフを豊かにする」というトリニティのスローガンの中で、中心を作ったら、やっぱり主人公中の主人公というか、NEOじゃないかなというところで。もちろんNEOというのは「新しい」という意味があるので、合致しているしっていうところでNEOになったんですよね。
なるほど。
はい。元々はiPhoneという主役がいた上で、僕らはアクセサリーでサードパーティーって言われるぐらいで、メインではありませんでしたが、今回はメインのものを作るので、NEOという名前に決定しました。
満を持して。
そう、満を持して。スマホ以上に便利なものを作るって、その時にはまったく想像できないので、これ以上先にNEOという名前をより使いたかった、ということはないと思っています。
そうですね。
実際このNuAns NEOを出してから10年ほどで最終卒業ということになってますけれども、振り返ったとしても、スマホ以上にメインのものを作ることはありませんでした。実際ウェアラブルとかいろいろ他のこともやりましたけれども、結局はスマートフォンがデジタルライフの中では一番主役であると思います。
はい。
それで、NuAns NEOというのは知ってる人は知ってたかなと思いますけれども、このポッドキャスト初めて聴いてくれたり、NuAns NEOが完全に終わってから知り合った方々もいるので、こういう名前がつきましたよというところをお伝えしたいなと。
しかも、話し始めたら長くなっちゃうんで申し訳ないんですけれども、NuAns NEOのこだわりの一つとして、電話なので呼び出し音があるじゃないですか。
はいはい。
電話がかかってきたときに鳴る音は、もちろん好きな音に変更できますが、初期設定の音には、映画『マトリックス』に登場する電話ボックスの呼び出し音を採用しています。現在では電話ボックス自体がなくなってしまいましたが、映画の中では、電話ボックスで電話が鳴っているのを受け取ると転送されるという仕組みがあり、電話の音がさまざまなシーンで使われているんです。
この電話の音をNuAns NEOの着信音にしているんですね。
へぇ。
もちろん、オリジナルをそのまま使うと問題が生じるため、サウンドエンジニアの方に、元の音源は一切使わずに、オリジナルにかなり近い音をゼロから作ってもらいました。これほどまでにこだわっているんですよ。
へぇ。
ちょっとこの話までしていくとね、どうしてもいろんなことが思いついちゃうんで、進まなくなっちゃうんで、今回ちょっとデザインの話というところに無理やり戻します。
はい。
それで、NuAnsブランドを立ち上げる時にも話しましたが、やっぱりスマートフォンって冷たいですよね。
そうですね。
というところがスタートにありました。NuAns NEOというスマートフォンを作る時も、「温かみ」や「手触り」といった要素を取り入れたいと思いました。NuAnsの初代のラインナップはフェルトという起毛の素材を使っていたんですが、スマートフォンのカバーとしては厚みが出すぎてしまうため、フェルトの使用は見送りました。
とはいえ、「様々な素材を楽しめる」「組み合わせができる」「最初からケースとして着せ替えができる」というコンセプトは絶対に実現したいと考え、その思いはTENTにも伝えていました。
うん。
最終的には上下を変えて組み合わせも楽しめるようになっています。一つ一つの色だけでなく、様々なものを組み合わせることで、より楽しさを引き出すというのがTENTからの提案で、「ツートーン」というコンセプトが生まれ、着せ替えができるようになりました。
はいはい。
上下でいろいろな組み合わせができるようになっていたんです。あと、当時はまだiPhoneのケースもそうでしたが、手帳型のものも主流だったので、手帳型のケースも用意していました。そして、ちゃんと開けるとオンになり、蓋を閉じるとオフになるという。センサーを付けて、それでちゃんと動くようになっていました。iPadも純正のカバーを含め、閉じるとスリープになり、開けるとオンになるのが標準になっていますが、NuAns NEOでは同じような仕組みを使って使いやすさを追求していました。
これはやっぱりそのアクセサリーメーカーじゃないとなかなかできないですよね。
そう思いますね。
そこに労力をそこまで割かないですもんね。発想もないのかもしれないですけど。
やっぱり他のメーカーは結局、透明なケースが主流でした。スマートフォン本体は金属やプラスチックだったので、その上に透明なケースを一緒に出す形でしたね。でも、我々はアクセサリーメーカーであり、スマートフォンにケースはつけるけれど、それ自体でさらに遊びたいというコンセプトは、我々ならではだったんじゃないかと思っています。
うん。
それで、初代でいろいろな種類を用意して、70種類くらいですね。最終的には、その後の機種も合わせると300パターンぐらいができるようになっていて、いろいろな組み合わせを楽しめました。実は、ユーザーがオリジナルでも作れるようにしていたんですよ。
はいはい。
この素材には、すごく重要な点がいくつかあります。まず1つ目は、繊維メーカーのクラレの「クラリーノ」という素材です。クラリーノは非常に丈夫な素材で、僕らより少し上の世代の方だと、ランドセルや靴、車のハンドルやシートなどに使われているのを目にしたことがあるかもしれません。手触りはほんのりサラサラしながらも、良い発色をします。
NuAnsは4色のアースカラーを展開していますが、それに合わせてこのクラリーノが作られました。これはかなり丈夫な素材ですね。ランドセルなどもそうですが、非常に強い素材で耐久性もあるため、この素材を選んでいます。
はい。
それで、これは実際には生地なんです。素材と呼んでいますが、カバーはもともとプラスチックに生地を貼る方式で作られています。なので、ベースとなるプラスチックがあって、そこに様々な生地を貼っているんです。
もう一つ、メインで使っていたのがウルトラスエードという東レの素材で、これも日本を代表する素材メーカーですね。ヨーロッパではアルカンターラという名前で知られていて、フェラーリなどにも使われている素材なんですよ。
高級っすね。
本当に高級感がありますね。本物のスエードではないんですが、スエード調で、触ると非常になめらかで温かみがあるんです。それで採用しました。本物のスエードって起毛があるじゃないですか。
はい。
起毛があるんだけれども、防汚性とか防水性とかがすごく強くて、上から醤油をこぼしても大丈夫です、ぐらいの素材なんですよね。
へぇ。
それで、これまでのiPhoneとかその他のAndroidの冷たい感じから、ちょっと素材感っというのもありつつ、その次としては木ですね。
そうですよね。何か僕のイメージではすごく木が残ってます。
このNuAns NEOは、これ今順番に話してるんで、その後も後継機が一応あるという前提で、カバーは共通でやってるので、このカバーの素材の話は2回に分けて話すという程でもないので、今回一緒に話してしまいますけれども、生の木ですね。本当の天然の木を使ったカバーを出しました。
初代の時はダークウッドとナチュラルウッドってちょっと薄めの2色で出したんですけれども、その後はコルクとかですね、石とかですね。石とか、ほんとすごいですよ。本当に石なんですよ。
はい。
今まで絶対に使われなかったし、NuAns NEOを見て真似しようというスマートフォンメーカーもあまりないかなとは思うんですけれども。石のような普通では考えられない素材や、これ以外でもコラボでやらせてもらったんですが、本皮でありつつも普通では絶対に使わなさそうな、クロコダイルとかオーストリッチとかリザードといった珍しい素材も使いました。
あとは芝生ですね。SHIBAFULというメーカーがiPhone用にケースを作っていて、芝生なんですね。
はい。
それで、芝生、手触りすごくいいじゃんということもあって、芝生にしたんですよね。カバーを付けるとこう、手で持つとですね、芝生感があるというですね。ここら辺は実はNuAnsのモバイルバッテリーとかでも、のちのち同じような形で芝生が使われたりというのも出てきています。
ふ〜ん。
先ほど生地を貼るという話をしたんですけれども、厳密にいうと貼るというのも正しくなくて、一体にしているという形ですね。普通は貼るんですよね。
はい。
正直に言うとレザーと芝生だけは貼ってます。本当に手で貼ってます。職人芸として貼ってもらっています。ただ、普通はやっぱり剥がれてしまうといった問題も出てきます。
うん。そうですね。
それでこれはベースのプラスチック樹脂をですね、成形といって金型に流し込んで固めるのですが、その時に生地も一緒に金型の中に入れて、一体成形する技術なんですよ。
じゃあ何か接着剤とかでつけるんじゃなくて、柔らかくなった樹脂がそのままくっつくという。
そうなんですよ。「IML」インモールドラベリングというですね、インモールドという技術。モールドってのは金型でインなので、金型の中でやるんですよね。
そこに流し込む。
そう。
ほぉ、なるほど。
なので、手で一個一個貼ってるわけではなく、成形する時に一体化しているので、基本的に剥がれることはないんです。もちろん、しっかり剥がそうとすれば剥がれることもありますが、通常は剥がれません。このインモールド(IML)も、実はかなり難しい技術なんですよ。特に木や布、ウルトラスエードといった素材をインモールドで成形するのは非常に難しいんです。一定の厚みや薄さでなければならないという制約があります。
先ほどお話しした木やコルク、石なども、1ミリくらいのシート状になっていて、これは大阪の小さな町工場のおじさんが作っているんです。ゼロワンプロダクツ株式会社の「テナージュ」という素材ですね。
(笑)
ちなみにマトリックスって3部作で、最近4部作目があったりしますが、ちょっと僕は好きじゃないんですけども。途中に『アニマトリックス』というスピンアウトアニメ作品があって、そこに機械が作った「ゼロワン」という名前の国が出てくるので、少し親近感がある会社なんですけれども、そこには面白い素材があって、「これならインモールドでできるね」と。
その素材自体は大阪のゼロワンプロダクツ株式会社から手に入れたのですが、それ以外の部分で、インモールドの成形技術がすごく難しいんです。
う〜ん。
何が難しいかというと、曲がっていることなんですね。
へぇ。
曲がっているところに成形でインモールドでやるというのが本当に難しいんですよ。これも青山にあるART&TECH株式会社が特許の技術を持っていて、4、5人のおじさんたちが作業しているんですよ。
少数精鋭。
この人たちは、確かな技術を持っていて、先ほどの素材メーカーのシート状素材と合わせて製品を作るんです。
以前もお話ししましたが、TENTには治田さんと青木さんがいます。今回のNuAns NEOのこのあたりのデザインのメインは青木さんが担当してくれています。これは若干皮肉な話かもしれませんが、プロジェクトを始めた当初は治田さんの方が乗り気で、青木さんは自分の欲しいものを作るという気持ちが強く、そこまで乗り気ではありませんでした。
しかし、最終的に引き受けてくれることになり、様々なデザイン案を出してもらった中で、僕は着せ替えツートーンのデザインベースがとても好きだったので、青木さんのデザインを採用させてもらいました。曲面を使ったデザインで、本当にいろいろな角度から見ていただくとわかるのですが、カーブが美しく、全体的に統一感のあるデザインなんですね。
うん。
このカバーというのも伝わるかな。Uの字になっていて、そこを視力検査のCに近いのかな、内側まで返ってきているところがあって、それをパコンとはめるんですね。
ちょっと口の部分が狭まってるってことなんですね。
そうそう、そうなんです。パコッとはめてテンションを掛けて引っ掛ける。先ほどのインモールドの件で言うと、これが頂点よりもさらに奥、内側に巻き込むような形にはできないんですよ。
Uの字なら貼れるけど、Cになっているんで凹んでる部分までは入らないということですね。
そう。Uの字だったらいけるけどCの字はいけない。
はいはいはい。
内側に入ってくるのが無理なんですよ。無理というか、技術的にやろうとして実現できている製品というのはほとんど無いんですよね。そこに食い込めない。
それで食い込めないと何が嫌だというと、スマートフォンってちょっと手元にスマホあれば持ってもらうと分かるんですけれども、普段使っている方向で持ってもらった時に、内側まで食い込んでいないと、手で持って使ってる時にその素材って見えないんですよ。
うん、確かに。
もし頂点までしかいかないようにしていた場合、実際は樹脂の部分しか見えなくなっちゃうんですね。
うん。
内側まで入ってくると、さっき言ったような、たとえば木とかレザーでも石でも、例の芝生でも握った時にまず指全体にその素材が感じられるというのがまず1つ目あるんですよね。
はい。
握った時に横が樹脂だと、ただの樹脂という感触にしかならないのですが、巻き込んでいることで、食い込んでいることで、ぎゅっと握った時にも手に馴染む感じがあるんです。この素材を使っている、という感覚ですね。
さらに、前から見えるというのもポイントで、じゃあ自分がどんなカバーを選んで、ツートーンならたとえば上が芝生、下がレザーといった組み合わせを選んだとして、それが目に見えて、さらに手で感じられる。スマートフォンを使いながらこれができる、というのを実現したかったので、前まで巻き込むデザインにしたかったんですよ。だけど「次元」の時と同じで、中国ではそれができなかったんです。
へぇ。
もう絶対できない。今もできないか分からないけどできない。ケースとかでも見たことないっすよね。実際。
そうですね。
AppleのiPhoneケースで、生地を貼っているものがありますよね。以前はFineWovenという名前だったのですが、不評だったため最近TechWovenに変わりました。素材感も少し変わったんですが、よく見ると、さすがAppleというべきか、うまく作っていても横は樹脂なんですよ。「素材が良い」と言っても、結局握ったときにその素材は感じられないくらいで、Appleは元々そこまで力を入れていなかったのかもしれません。
でもNuAns NEOでは、生地を巻き込んで前面まで見せ、手触りがしっかり感じられる素材を使っていたんです。だからこれは本当に技術がすごいというだけでなく、僕としては、今お話ししたような意味のあるデザインにできたことと、やっぱり中国ではできない、ものづくりとして実現できたことにも、すごく強いこだわりを持って取り組みました。
これなんか今の話を聞いていると、珍しいものと珍しいものを掛け合わせたら唯一無二が生まれるということなんですよね。
そうですね。
これ、商品開発で結構応用効きそうだなって、今、話聞いてて。
はい。
珍しくないものを作るだけだと、ただのコスト勝負になってしまう。販売力で勝負するか、コストで勝負するか、という話になってしまうので、何か他と差別化したいなって思った時に、ただ珍しいだけではダメで、でも2つの技術が組み合わさることで、世の中にほとんど存在しないものが生まれるという。
そうですね。
なるほど。
ということで、NuAns NEOの大きな特徴は、コアコンセプトとして、テクノロジー側の「コア」にスマートフォンの様々な機能が搭載されていて、そこにカバーという形で上下をいろいろ組み合わせられるというのがこのNuAns NEOの一つの大きな特徴で、ビジュアル的にも本当にかっこいいんですよ。
うん。
すごく話題になりやすい。ただ、仕上がったものはかっこいいけれども、実際に日本の中小企業のおじさんたちと僕やTENTを含めたこだわりというのが詰まってるのは、声を大にして言いたいですね。
う〜ん。
すごく評価は高かったですよね、結果として。まずスマートフォン本体が着せ替えできるというのがないし、そして本体自身に石とかちょっと突飛な芝生とかですね。
そうですね。
iPhoneケースで競合だった坂本ラヂヲの社長と知り合いだったんです。そこはこだわりを持って素材を使い、ハイブランドを展開していたので、個人的にも面白いなと感じて交流がありました。そんな中で、「何か超高級なものも欲しい」という思いが湧いてきて、先ほど言ったような高級財布に使われるようなクロコダイルやオーストリッチのケースを作ってもらいました。それが伊勢丹などで販売されたところ、かなり売れたんですよね。
へぇ、なるほど。
ということで、iPhoneケースでは競合でしたが、我々のスマートフォンであれば関係ないということで、快く協力してもらえました。
前回は機能的なところをお話しして、今回はデザインをお話してきましたけれども、デザインにはもう一つこだわりがあって、青木さんがR(円)をうまく使って統一感のある変形デザインにしてくれました。充電端子には、僕が知る限り、日本のスマホメーカーとしては初めてUSB Type-Cコネクターを採用しました。
うん。
これは機能の話にも聞こえるかもしれませんが、デザイン的にもUSB Type-Cの円形のデザインにしたかったので、USB Type-Cを採用しました。今ではiPhoneですらUSB Type-Cを使っていますし、今はUSB-Cと略すのが主流になりつつありますが、正式名称は長いのでね。ただ、僕は普段USB Type-Cという元々の正式名称を使いたいと思っています。
そして、シンメトリーが好きで、コネクターがシンメトリーである点がNuAns NEOのデザインと合っているという見た目の理由もあります。ご存知かもしれませんが、USB Type-Cはどちらの方向に挿しても正しく充電できるんです。
はい。
それまでのスマートフォンは基本的にMicroUSBを使っていて、これは片側しか挿せない設計でした。配線側が逆だと困る問題があったためです。しかし、テクノロジーが進化したことで、逆に挿しても問題なくなりました。現在ではiPhoneも含め、USB Type-Cが主流になっています。
一応僕が知る限りでは、日本のスマートフォンで初めてUSB Type-Cを採用したんですよね。コネクターを変えただけなので、なぜ他のメーカーがすぐに採用しなかったのかは疑問ですが、当時からType-Cは存在していました。おそらく、各メーカーの互換性やこれまでの延長での製造が関係していたのかもしれません。我々はコネクターだけを変えたため、現在の高速充電のような仕組みではありませんでしたが、USB Type-Cを導入しました。
Appleはその頃はLightningですね。Lightningというのは上下どっち挿してもいいので、これはこれですごくいいデザインというか、使い勝手はすごく良かったですよね。
うん。
そういった細かいこだわりも含めて話し始めると、延々と話せてしまうので、みなさんもう眠れなくなるくらい、三日三晩僕が話し続けてもいい、というのであればまだまだあるのですが、そろそろ発表の話にいこうかなと。
はい。
以前お話しした通り、2015年5月頃から本格的に始動し、急ピッチで準備を進めていました。その中で、マイクロソフトがWindows 10 Mobileという端末を発表するタイミングがあり、我々も声をかけていただき、この開発に携わっていきました。我々以外のメーカーもこの場で一緒に発表会をしましょう、ということになり、2015年10月に後楽園のホテル、東京ドームの目の前で発表会が開催されました。
ですので、本当に5月からスタートして、ODMを決めて、本当にスタートしたのはもうちょっと後の6月か7月だったと思います。それで10月に発表ってことだったんですよね。
最初、話自体は3月とか、2月とか。
そう、最初は2月の終わりぐらいかな。
その時点で、「10月までに間に合うんだったら一緒に発表できるよ」みたいな感じだったんですか?
いや、最初はその時には10月というスケジュールは出てなかったと思いますね。
けど早いっすね。
裏話として、10月14日に発表会があったんですが、詳細をちょっと忘れてしまいましたが、前日の夕方くらいだったと思います。その時に初めてNuAns NEOにWindows 10 MobileのOSを入れて起動したんです。
ギリギリだったんですね。
いや、元々マイクロソフトもリリースが少しずつ遅れていて、「うまく動かない」ということが結構ありました。発表会なので、たとえ動かなくても「こういうのを端末メーカーとして出しますよ」と表明するだけで良かったんです。
だから、実際には動かなくても問題はなかったんですが、製品だけ見せるよりも、ということで、前回お話しした天才永山さんが中国と何度もやり取りして、持ってきてくれて「起動しました!」と。それには「あっ、起動したんですか!」という感じでしたね。ただ不安定だったので、「ここに触ると動かなくなるので、触らないでください」など、いろいろとありました。
デリケートなんですね。
そうそう。それで、前日に起動して、「これはすごいな」って思いました。ちょっとまた違う話になるんですが、その時はマイクロソフトの発表会の企画担当の方だったのでしょうか、ネクタイを青で揃えてくださいと言われて、ネクタイが確か配られたんですよ。
ああ、もう指定なんですね。
それで、やはり少しショボいというか、僕はこれまで真っ青のネクタイをしたことがなかったんです。でも、これだけはみんなで揃えなければならないという事情もあって、ネットで調べてみたら、ネクタイのちょっと特別な巻き方で「トリニティ巻き(トリニティノット)」というのがあるらしいんですよ。結び方が。それで、その巻き方を動画で見ながら練習して、トリニティのロゴっぽい、三角形のような形になる結び方を試していました。
ただ、結局僕は指定されたそのネクタイを使わなくて、それだとトリニティ巻きがうまくできなかったので、細めのネクタイを使ってやったんです。
はい。
この発表会は今でも印象に残っていますし、面白かったですね。僕はこれまでiPhoneアクセサリー関係で、メディアの方々と取材などでお付き合いがありました。でも本田雅一さん以外は、我々がこのスマートフォンを作っていることを知らないんですよ。
だから、発表会でマイクロソフトが「Windows 10 Mobileをこれからやります」「スマートフォンをやります」と発表したのを皮切りに、メーカーの方々が「このメーカーがWindows 10 Mobileのスマートフォンを出します」という形で壇上に呼ばれるんです。
そこで僕がトコトコとNuAns NEOを2台持って歩いて出てくるんですよね。するとメディアの人たちは「あれ? 星川さん、何あれ?」という反応でした。
そうっすよね。
2台持っていったのは、起動しているところを見せたかったのと、ツートーンのかっこいいデザインを見せたかったからなんです。裏表両方見せたかったんですよね。
壇上に上がって記者席を見渡すと、マイクロソフトの発表会だったので、たくさんの人が来ていました。記者席にいる知人たちが驚いている顔が見えて、すごく面白かったんですよ。多分、マイクロソフトの人たちも「ちょっと面白い」と思ってくれたんじゃないかな。僕はセンターの隣に立たせてもらって、ニヤニヤしながら記者席を見ていました。
いろいろなメーカーが出たんですけれども、発表終わった後に囲みっていって、別の場所で囲まれていろいろ聞かれるようなやつあるじゃないですか。
はい。
そこにも知っている人たちがたくさんいて、本当に面白かったです。その時はまだ実は起動したばかりでみたいなこともちゃんと話しながら、「発表会は別のタイミングでしっかりやりますね」みたいなことは話してました。
すごいな。発表が10月ってことは、その前にその情報を本田さんから手に入れるということ自体も結構すごいっすよね。
発表会自体は告知されてますね。
だから一般の人は Windows 10 Mobile のことは知らないわけじゃないですか。
厳密に言うと、アメリカでは出てたかもしれないし詳しいことは分かりません。ただ、これは日本での展開についての話ですね。日本でどのようなスマートフォンが登場するのか、おそらくマイクロソフト側も内緒にしていて、ここで一気に紹介するようなサプライズを計画していたのだと思います。
なるほど。
僕も会場にいた時に会ってしまうと「あれ、なんでここにいるの?」という話になってしまいますし、しかもさっき言ったように青いネクタイをしているとバレてしまうかもしれないので、なるべく隠れながら発表会に出たんです。それが、結構面白い思い出ですね。
へぇ。
そして、11月には正式に発表会を行い、39,800円で売り出すことになりました。当時、我々は他社の製品についてまったく知らなかったのですが、この時に初めて知ることになるんです。
ただ、他社の製品を見た時、以前工場を回った際にリファレンスとして用意されていた製品があって。それが実際に「あれだ」みたいなことが分かってしまったということもありました。我々も39,800円くらいで販売していたのですが、もう少し高価なものもありつつ、1から作ってないよねっていうものがほとんどではありましたね。
ふ〜ん。
なので、注目度としては一番高かったと思います。先ほどの囲み取材と言っても、僕らを囲んでいたら他のメーカーを囲むことができないので、僕の知る限りでは、他のメーカーはあまり囲み取材をされていなかったのではないかと思います。
実際に、我々の製品が1から作られたかどうかは別としても、一番かっこいいものに仕上がっていたかなと思います。だからこそ、先ほどお話しした壇上でも、本当にセンターのところに立たせてもらったりしたのだと思います。マイクロソフトの人が見ても「どれが一番話題になるかな」と考えていた上で、そのような形で発表をさせてもらったのかなと思います。
へぇ、すごい。
それで、別途、代官山のところでですね、発表会をやりました。
うん。
ツートーンという形で、ウェルカムドリンクで上下に色が分かれたようなものを用意したりとか。
比重が違うやつですね。
そうそう、おしゃれな感じの発表をしました。
はい。その11月にやった、自分たちの発表会はどれぐらいの人が集まったんですか?
そうですね。会場もそこまで大きいわけじゃないんですけれども、だいたいトータル100人ぐらい集まってもらいましたね。
へぇ、100人も集まるんですね。
はい。
メディアの人ですよね。
そうそう、これ100人と言っていますけど、実際には50人ずつに分けて2回発表しているんです。これについては賛否両論あるかもしれませんが、僕はこれまで何度か発表会をやってきて、今でもこの方式が一番いいと思っています。発表会の話はまた別の機会に詳しくお話ししたいと思いますが、おそらくこのNuAns NEOの発表会が、トリニティ史上最も注目された発表会だったのではないでしょうか。
というわけで、ここまでで区切りとさせていただきまして、次回は発表後にお店に展開していく方法や、どのようにして販売に繋がり、売れていったのかといった話まで掘り下げていきたいと思っています。
はい。
というところで、今日のところはここまでとさせてもらいます。ありがとうございました。
ありがとうございます。
リアル経営|企業経営の成功と失敗。等身大で語る台本なき社長のリアル」
概要欄にこの番組のWebサイトへのリンクを張っております。 感想、メッセージ、リクエストなどそちらからいただければ嬉しいです。
毎週金曜朝6時配信です。ぜひフォローお願いします。
ここまでの相手は、Hossyこと星川哲視と
がじろうでした。
それではまた来週、お耳にかかりましょう。
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